【ルノー トゥインゴ GT試乗】F1のDNAが息づく!痛快な走りを楽しめるホットハッチの新星
&GP / 2018年2月3日 19時0分
【ルノー トゥインゴ GT試乗】F1のDNAが息づく!痛快な走りを楽しめるホットハッチの新星
ルノー「トゥインゴ」のスポーツ仕様「トゥインゴ GT」の第一印象は、「小悪魔的というか、背伸びをしている感じがカワイイな」というものでした。
ブラックアウトされたフロントグリルや、サイドのストライプ、Cピラー下のエアインテークも、ルノー一流の…いや、F1をはじめとするルノーのモータースポーツ活動を牽引するルノー・スポールの、ちょっと気の利いたイタズラなのかと思ったのです。
でも、ステアリングを握り、走り始めて数分、自分の勘違いが恥ずかしくなりました。
トゥインゴ GTのベース車は、2016年秋に日本導入が始まった3世代目のトゥインゴで、スマート「フォーフォー」とはRR(リアエンジン/リアドライブ)レイアウトをはじめ、基本メカニズムを共にする兄弟車。
そんな生い立ちからして「見た目を軽く手直ししたお手軽スポーツモデル」と思ってしまったのですが、軽快にして骨太な走りに、思わずニヤリ。そして、意外にも本気なスポーツモデルらしさに「やっぱりルノー、やるなぁ…」と。思わずヒザを打ったのです。
■GTらしく、高速道路でのクルージング性能も上々
昨秋、限定200台が先行して日本へ導入され、好評を博したトゥインゴのホットモデル「GT」が、この度、晴れてカタログモデルとしてラインナップされることになりました。
限定版を手に入れ損ねたという人は、興味津々のはず。しかも、限定モデルは5MT仕様のみの設定でしたが、今回のカタログモデルでは、5MTのほかに、デュアルクラッチ式ATの"6速EDC"もラインナップされています。
最近のルノーといえば、「メガーヌ」や「ルーテシア」とった辛口ハッチバックを多く手掛けるブランドとして、スポーツドライビング好きから高い評価を得ています。トゥインゴ GTもそうした例に漏れることなく、見た目こそキュートなたたずまいですが、中身はピリッと辛口な実力派スポーツモデルに仕立てられています。
全長3630mm、全幅1660mm、全高1545mmというボディサイズ、1010kgという車重はベースモデルとほぼ共通。しかし、リアのラゲッジスペース下に搭載されるエンジンは「ゼン EDC」や「インテンス」といったノーマルグレードに搭載される排気量897ccの直列3気筒DOHCターボをベースに、最高出力を90馬力から109馬力へと大幅にアップしています。
高出力化に当たっては、排気系やECUの変更はもちろんのこと、実は、サイドのエアインテークによる吸気温度の低下も、パワーアップに貢献。GT専用のインテークはカタチだけでなく、しっかり機能性も備えた装備なのです。
もちろん、シャーシにも手が加えられており、ショックアブソーバーの強化やアンチロールバーの大径化により、ダイナミックなハンドリングを実現。さらに、"ESC(横滑り防止装置)"のセッティングも変更されており、ドライバーがコントロールできる領域が拡大されているのも特徴といえるでしょう。
インテリアに目を移すと、オレンジのストライプが入った、レザー調素材とファブリックを用いたシートや、シフトレバーまわりのあしらいなど、コーディネートもGT専用となっています。標準モデルではボディカラーに合わせ、カラフルかつポップな仕立てとなりますが、GTでは要所となる部分にワンポイントで差し色を用いるなど、やや大人っぽいコーディネート。好みもあるとは思いますが、仕様の違いをテクスチャーや色使いでしっかり表現してくる辺りは、相変わらず巧みだなと思います。
さて、エクステリアやインテリアに魅力を感じつつ、走りはどうなの? と思っていたのも事実。何しろ、車重1トンに約110馬力、RRレイアウトですから、基本的に安定方向のセッティングだろうという読みもありました。
5MT仕様で走り始め、真っ先に感じたのは、カッチリとしたボディと軽快なエンジンによる爽快さと活発さでした。ターボエンジンとはいえ、1リッターに満たない排気量ですし、パワーが有り余るというほどではありませんが、そこそこ回っていれば十分にトルクフルで、加速も伸びやか。右足に力を込めると金属的なビートを伴いつつ、信号ダッシュを軽くリードすることも可能です。
また、シフトレバーやクラッチなど、変速操作で必要となる部分の感触も良好。特にシフトレバーのタッチは余分なフリクションはありませんが、程良い重さを感じさせるもので、ベーシックカー的な安っぽさを伝えてくることはありません。
一方、トゥインゴ GTの駆動方式がRRレイアウトであると聞いて、その身のこなしが気になる…というクルマ好きもいることでしょう。
RRといえば、古くはフォルクスワーゲン「タイプⅠ」(通称:ビートル)や、ルノー「4CV」など、スペース効率を重視した実用車に用いられる一方、ポルシェ「911」やアルピーヌ「A110」といった、往年の傑作スポーツカーにも採用されています。同時に、RRスポーツの場合、ドライビングには相応の“腕”を必要とするといわれていました。
重量バランスや各タイヤの役割を考えると、かつてのスポーツモデルでその本領を楽しむことができたのは、一部の腕利きだけだったのも事実でしょう。しかし、トゥインゴ GTの場合、もちろん、そんな心配は無用です。
テストドライブは、高速道路を含んだ公道のみでしたが、タイトなカーブでも危うさを感じることはありませんでした。むしろ、印象として強く残ったのは、ステアリングの動きにスイスイと反応するノーズの軽い動きで、これがスポーツモデルらしい軽快さと楽しさを感じさせる大きな要因になっているのは間違いありません。
もうひとつ意外だったのは、高速道路におけるクルージング性能の高さ。確かに、前輪に荷重が掛かるFF車に比べると、段差を通過する際など、直進性が気になるシーンもないわけではありません。とはいえ、80km/hから100km/hほどでひたひたと距離を重ねるようなシーンでは、ひとクラス上のクルマに勝るとも劣らない、しっかりとした乗り心地とスポーティな操縦感覚を味わうことができます。まさに、小さなGT=グランドツアラーらしさもしっかりと秘めているようです。
「末っ子でも、やっぱりルノーだね」と、そのスポーティさに思わずニヤリとしてしまうトゥインゴ GTではありますが、とはいえ、要望がないわけでもありません。5MT車で229万円、6速のEDC仕様で239万円と、本国での価格を考慮してもかなりのバーゲンプライスなのは間違いありませんが、ドライブ中に何度も「コレあればいいのになぁ」と思ったのが、エンジンの回転計。
エンジン回転数は、スポーツドライビングを楽しむ上では欠かせないデータですし、アナログの針が踊る独立した回転計があれば、気分だってより盛り上がるはず、と思ったのです。ただし、ルノー車専用のスマートフォンアプリ「R&Go」では、エンジン回転計の表示も可能なので、ひとまずはそれでガマン、といったところでしょうか。
まさに、重箱のすみをつつくかのようなリクエストですが、ドキドキ、ワクワクなスポーツモデルを次々と提供してくれるルノーだけに、最後にそんな希望も記しておきたくなりました。
<SPECIFICATIONS>
☆GT(5MT)
ボディサイズ:L3630×W1660×H1545mm
車両重量:1010kg
駆動方式:RR
エンジン:897cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:5MT
最高出力:109馬力/5750回転
最大トルク:17.3kg-m/2000回転
価格:229万円
(※写真は2017年秋に上陸した限定版)
(文&写真/村田尚之)
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