【ベンツ Aクラス海外試乗②】未来的コクピットをカタチした“MBUX”の実力とは?:河口まなぶの眼
&GP / 2018年5月19日 19時0分
【ベンツ Aクラス海外試乗②】未来的コクピットをカタチした“MBUX”の実力とは?:河口まなぶの眼
自動車の生みの親ともいえるブランド、メルセデス・ベンツが、強力なライバルがひしめき合う欧州“Cセグメント”カテゴリーに新たに送り込むのが、今回で4世代目となる新型「Aクラス」。
4世代目は、メルセデス・ベンツのエントリーモデルでありながら、デザインや走りを格段にブラッシュアップ。さらに、安全装備や快適装備を充実させたスタイリッシュな1台へと進化しました。
そんな注目モデルをいち早くドライブしたのは、YouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」を始め、雑誌、Webと多彩なメディアで活躍する河口まなぶさん。自らもメルセデス・ベンツを乗り継ぐ人気の自動車ジャーナリストは、新型Aクラスにどのような思いを抱いたのでしょうか? 走りと安全性に関するレポートをお届けした第1弾に続き、第2弾となる今回は、新型Aクラスで初採用された全く新しいインフォテイメントシステムなどについて深掘りします。
■新型Aクラスの真価は、従来のクルマの価値観では測れない
走る・曲がる・止まるというクルマとしての基本や、完成度の高さや内容・装備の充実度といった“これまで”の自動車の価値観において、クラス随一の実力を持つのが新型Aクラス。
だが、実は新型Aクラスにおける最大のトピックは、ライバルはもちろん、同社のフラッグシップモデル「Sクラス」ですら備えていない、新世代のインフォテイメントシステムをいち早く取り入れたこと。そして、これは同時に“これから”の自動車の価値観として重要な要素になるはずの部分に、どこよりも先に手をつけたともいえる。
それが、新型Aクラスの目玉でもある“MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)”だ。メルセデス・ベンツとしても全く初めての、全く新しいマルチメディアシステムが、新型Aクラスに最初に導入されたのだ。
新型Aクラスのインテリアで最も印象的なのが、従来のメータークラスターが存在しないこと。代わりに、ダッシュボードの半分以上を1枚のパネルが占めるという、未来感漂うものとなっている。これこそがMBUXの採用によって生まれた、新たなコクピットの姿といえる。
この1枚のパネルは、実際には10.25インチのディスプレイがふたつ並べられる構成で、それぞれの画面は、ハンドルに搭載されたタッチコントロールボタンや、センターコンソールのタッチパッド、または、画面に触れるタッチスクリーンで操作が可能。実際、サクサクと動く操作性は、まさにスマホ感覚そのものといっていい。
だが、MBUX最大のトピックは“インテリジェントボイスコントロール”を備えたこと。これは、iPhoneのSiri、Google HomeやAmazon Echoなどのスマートスピーカーと同じ感覚。そう、曖昧に話しかけてもAI(人工知能)が理解し、マルチメディアや室内の操作関連を動かせる仕組みだ。
システムの起動は、ドライバーが「Hey Mercedes!」と呼びかけるだけ。すると新型Aクラスは「How can I help you?」と答える。これに対して乗員が何かをリクエストすると、さまざまな反応を示すのだ。
例えば「I’m hungry」といえば、近隣の飲食店をリストアップ表示。このほか、明日の天気を聞けば画面に表示するし、エアコンやシートヒーターなどを音声で設定することもできる。
ちなみにこのシステムには学習機能が備わっており、ユーザーとその声に対する理解力を自らが高めるほか、サーバー上のソフトウェアによって、新しい流行語や、時代による言葉の用法の変化まで学習するらしい。
実際に使用してみると、一般的なエアコンの温度調整などは、音声で指示するよりもスイッチで操作した方が早いが、例えば、25℃から一気に20℃へと一気に設定変更するような場合は、音声の方が一発で変更できるし、スイッチ等を注視したり何度もタップしたりする必要もない。
また、車両の細かな設定などは、従来はコントローラーを使って画面にメニューを呼び出し、深い階層に到達してから機能を設定したが、こうしたわずらわしさからも解放される。例えば、新型Aクラスにはオプションで64色のアンビエントライトが備わる。これをコントローラーで設定しようとすると、メニューから階層をたどる必要がある。しかし「Hey Mercedes!」と呼びかけ「Ambientlight red!」といえば、一瞬で任意のカラーに変更可能だ。
ちなみに英語圏では、音声コントロールはスマートスピーカーの普及などからも分かるように、結構メジャーなこと。運転しながらメールやメッセージの送受信等は、よく行われていることだという。そう考えると、運転中に何かを目で見て、手で操作するよりも、音声で会話して操作する方がはるかに安全・安心が得られるとも考えられるわけだ。
このインテリジェントボイスコントロールは、現在、日本語対応の真っ最中だそうで、新型Aクラスが日本に上陸する際には、日本語によってコントロールができるようになる。果たしてそれが、どのくらいのレベルに達しているのかも興味深いところだ。
またナビゲーションでは、ユーザーが頻繁に通行するルートやよく行くお店を検知すると、予測機能でオススメとして提案するなど、一歩進んだコミュニケーションを可能としている。そして、これらの機能は、今後、アプリケーションの追加なども含めて発展性があると考えられる。
こうして新型Aクラスは、まだどのクルマも、どのメーカーも使っていない、自然な対話型のユーザーインターフェイスを真っ先に取り入れた1台として評価できる。
さらに「さすがだ!」と感じるのは、このような先進システムを、自動車の生みの親といえる歴史と伝統を持つメルセデス・ベンツというブランドが、他に先んじて採用したこと。
当然ながら、今回のMBUXを使うと、まだまだ改善が必要だと感じる。けれど、細かなことはさておき、時代のニーズにまず対応してみるというその積極性に、強く感じ入るのだ。
しかも搭載したのは、Aクラスという同社で最もコンパクトかつリーズナブルなモデルである点も重要だろう。なぜなら、Aクラスより高級なクルマや豪華なクルマはたくさんあるが、それらには現状では搭載されていないものが、エントリーモデルともいえるこの1台にはあるからだ。
その意味において、新型Aクラスはこれまでの自動車の価値観を変えるような存在ではないか、と僕は思ったのだった。
しかし、そんなAクラスとはいえ、弱点は考えられる。唯一、気がかりがあるとすれば、価格においても従来の価値とは異なる存在になりそうだからだ。
つまり「コンパクトカーだから安い」という部分に、少し変化がありそうだということ。なぜなら、今回試乗した限定モデル「A250 エディション1」は、装備の豊富さと充実度から見て、その価格はおそらく、「Cクラス」のエントリーグレード以上になるだろうと考えられる。
そして、おそらく販売の中心になるであろう、1.4リッターエンジン搭載の「A200」なども、日本仕様は装備が充実する分、最も多くの人が選ぶモデルでは、400万円台の後半になるだろうと予測できる。
しかしながら、新型Aクラスはもはや、欧州Cセグメントのコンパクトカーという表現が似合わない気もしている。
なぜなら、その姿形こそ5ドアのハッチバックだが、走りのレベルの高さや装備の充実ぶり、そして、MBUXの採用などを考えると、もはや新たな価値観を持つ新たなクラスを創造するような存在にも思えるからである。
そういう意味でも、新型Aクラスはこれまでの価値観では測ることのできない、新世代のクルマだと感じたのだ(完)。
(文/河口まなぶ 写真/メルセデス・ベンツ日本)
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