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人生に納得は必要無い/純丘曜彰 教授博士

INSIGHT NOW! / 2015年10月2日 4時30分

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純丘曜彰 教授博士 / 大阪芸術大学

 最近は子供の学習教材もパソコンだ。ところが、うちのやつが英語の問題にごちゃごちゃ言っていて、ずっと先へ進まないまま。仕方ないから見てやった。「次の言葉の終わりと同じ発音の言葉を選びなさい。問題1.door 選択肢 a)fox、b)desk、c)table」まあ、言いたいことはわからないでもない。どう見ても、問題がおかしい。「ねえ、やっぱり変だよね、こんなの、どうしたらいいのさ?」


 だが、私は東大卒だ。だてに熾烈な受験勉強をくぐり抜けてきたわけではない。問題が変でも、どうしたらいいのかは、わかる。で、a)を押す、ダメ。b)を押す、ピンポ-ン! 以上、終わり。さあ、次、やれよ。「え? door と desk じゃ、言葉の終わりの発音が同じじゃないよ」そうかもしれない。だが、そんなことは知ったこっちゃない。とにかく正解は正解だ。


 「それ、ズルじゃん」まったくこうるさいガキだ。問題が変なんだから、ズルもへったくれもあるものか。問題がまちがっているのだから、まちがっているのが正解で、どこがおかしい?「でも、選択肢の三つとも、どれも押して、うまくいかなかったら?」そんときは、そんときだ。その問題は無かったことにして、とっとと次の問題に行く。「だけど、問題を飛ばしたら、100点は取れないよ」それがどうした。なんで100点を取らないといけない? そんな変な問題で100点を取ろうとすることがまちがっている。


 いくら正論を言ったって、通らないときは通らない。むしろ、適当におべんちゃらを言って、キミのプロジェクト、よくわからんが、予算はつけてやったよ、まあ、がんばりたまえ、ということになれば、それでいい。そんなのハイカロリーなものを喰ってたらダイエットの意味が無いだろうに、と思っても、デートで彼女をスィーツの店に連れて行って、それで上機嫌なら、それでいい。なんでこんなガラクタみたいなの買うのかなぁ、と思っても、顧客が見栄をはって、バカスカと、むだな買い物してくれるなら、ありがとうございました、と、頭を深く下げて、それでいい。


 世の中がデタラメなのだ。矛盾している、とか、首尾一貫してない、とか、文句をつけても、世の中が矛盾していて、首尾一貫していない以上、答えもまた、矛盾していて、首尾一貫していなくて、それでちょうどいい。丸い地球に、きっちりした三角定規を当てても、なにも計れない。地球が丸いのだから、むしろ曲がった巻尺を使う方が正しい。


 なんで女はそうなのか、なんで男はそうなのか、なんで子供は、なんで年寄は、なんで人生は、なんでこの国は、などなど、いろいろ不満を言い募ってみたところで、なにも変わらない。なんでオマエはネコなんだ!と文句をつけても、ネコはニャーと鳴くだけで、イヌになるわけではない。女は、男は、子供は、年寄は、人生は、この国は、そういうもんだ、というところから始めないと、どうしようもない。


 いくら考えたところで、正解なんかわかるわけがない。もともと他人が勝手に作った、まちがった問題だ。わからないこと、どうでもいいことに頭を悩ませるな。そういうもんだ、と、認めてしまって、いろいろ適当にやってみて、どれかうまくいけば、それでいい。100点なんか、取ろうと思うな。この世の人生は、まちがった問題だらけで、最初からぜったいに100点なんか取れっこない。まあ、これがダメでも次がある。むだに考え込んで立ち止ったりせず、手探りに、とりあえずなにかやってみよう。


(大阪芸術大学芸術学部哲学教授、東京大学卒、文学修士(東京大学)、美術博士(東京藝術大学)、元テレビ朝日報道局『朝まで生テレビ!』ブレイン。専門は哲学、メディア文化論。)

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