aiboによる介在療法が慢性疾患を抱える子供たちに与える癒し効果について検証を開始
ITライフハック / 2018年12月3日 9時0分
国立成育医療研究センターこころの診療部児童・思春期リエゾン診療科の田中 恭子診療部長らの研究グループとソニーは、ソニーの自律型エンタテインメントロボット“aibo”による小児医療現場における長期療養中のこどもに与える癒やし効果の検証を、2018年12月より開始する。
国立成育医療研究センターは、小児・母性疾患を治療するナショナルセンターで、小児がん・臓器移植・慢性疾患などで長期入院を要する小児症例が多数ある。そして、これら長期入院を要する慢性疾患患者に対して、「家族」、「医療従事者」、「社会」等と繋ぐこと:リエゾン医療を目的とするリエゾン診療を実施してきた。
小児リエゾン精神医学領域では、認知行動療法(リラクセーションなど)、家族療法などの効果が報告されており、その実践効果が検証されてきた。他方、補完代替え療法としての動物介在療法は、動物と人との交流がもたらす健康、自立、生活の質改善を目的に、補助療法、非薬物療法あるいはケアの一環として臨床で行われている。
その対象は、うつや統合失調症、PTSDなどの精神疾患患者、情緒や発達障害を伴う子どもであり、実施の利点として、対象者の情緒安定、自主性意欲の向上、社会性改善、自立適応の向上などの効果があげられている。他方で動物介在による感染症のリスクや、外傷、咬傷などの副作用が懸念されることから、開放創や皮膚疾患、動物アレルギー、免疫力低下のある患者などには適用されていない現状があるとのこと。
近年ロボットを通じた子どもの心の発達心理学研究(とくに認知、意図、意思、心の理論)が進んでいる。生まれて数カ月の乳児は人に興味をもち、顔や身体の形の特長、動き方に注目し人との特別な関係性を築いていく。このステップが対人コミュニケーション発達に大きく影響するとされてきたが、近年、ロボットにおいても乳児との相互作用や人らしい形態などを付与すると、その視線を追従しようとすることが判明してきた。この結果は、ロボットがインタラクティブな存在であることを子どもに経験させることで、ロボットからの学習効果を引き出すことへの期待をもたらしている。とくにメンタライジング(人の心を推し量る課題)の発達は社会において重要であり、このような発達要素が人の動きをみて反応し行動するaiboの特長を通じて、子どものこころの発達過程を分析的に知ることができる可能性を探る、癒し効果の検証となる。
また医療におけるロボット技術応用に関する期待は高まっている。成人における手術支援ロボットや脳血管障害後の上下肢トレーニングロボットの適用に加え、高齢者を対象にしたメンタルコミットロボットによる癒し効果や、小児入院支援の定量的効果の研究などがパイロット的に示されている。この一方で、特に小児においてはロボット技術の汎用性が狭く、まだ十分には臨床応用されていない状況だ。今回aiboを慢性疾患で長期入院を要する子どもたちへのリエゾン医療として導入し、子どもと家族の癒し効果を生物・心理・社会的手法を用いて質的・量的に検証するとのことだ。
なお本研究で用いるaiboは研究に向けた特別仕様の機体となる。市販のaibo(ERS-1000)は、ユーザーの同意のもと、撮影した写真をクラウド上に保存しスマートフォンやPCで閲覧する機能があるが、本研究では被験者の個人情報の扱いに留意し、被験者の顔写真等の個人を特定可能なデータは成育医療研究センター内でのみ管理し、クラウド上への保存やソニー側では管理しない。またaiboが取得したセンサや認識結果等のデータは研究分担者が研究上の分析にのみ用いる。なお実験に用いるaiboの通信機能(電波利用)は必要に応じて制限する。
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