川勝知事が辞任しても、リニア着工は加速しないワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月18日 8時15分
リニアの実現はいつになるのか
静岡県庁の新人職員へ向けた訓示での発言が物議を醸した川勝平太静岡県知事。4月3日の臨時記者会見では「再出馬しない」と宣言し、4月10日に辞表を提出した。川勝知事はリニア中央新幹線の着工に反対し続けたことでも知られる。同氏の辞任が、リニア完成への大きな一歩につながったとする意見も多いが、実はそうではない。
その理由は至ってシンプルだ。静岡県内の環境問題、特に水資源への潜在的な影響に対する地元住民の懸念が依然として大きいだけでなく、プロジェクトの遅れによって静岡工区以外でも2027年までに完成しないエリアが存在することが明らかになったからだ。
本記事では、川勝知事の職業差別発言には触れない。あくまで冷静に、リニアをめぐる過去の事例や最新の工事の進捗を確認したい。
●2つの“水枯れ前科”
まずは過去の事例から。なぜ静岡県民は水への影響を重く考えているのか。
9キロメートルというごく短い工区に対して過剰反応にも思われるかもしれない。しかし、実はこれまで国家的プロジェクトが静岡に対してもたらした2つの“水枯れ前科”がある点を忘れてはならない。
東海道本線丹那トンネル工事(1918~34年)では、トンネル掘削により大量の湧水が発生し、その結果、芦ノ湖3杯分に相当する6億立方メートルの水が失われた。この影響で、山葵(わさび)栽培や水田、飲料水源が枯れ、数千人の農家が被害を受けた。被害をこうむった人々にはいくばくかの補償が行われたが、失われた水資源はついに戻ってこなかったのである。
次の事例は今から24年ほど前の1999年に起きることになる。新東名高速道路粟ケ岳トンネル工事中、大規模な出水が発生した。この出水では、掛川市を中心に農業用水が枯れてしまい、地下水を断水させるに至った。新東名高速の土木プロジェクトを推進する日本道路公団は補償的措置として工事を行ったが、簡単に水は戻ることがなく、補償には相当の時間がかかってしまったという。
これらの事例では、いずれも数キロメートル以内の“短い”トンネル工事中に行われた水枯れ事案だった。リニアが通る静岡の9キロメートルという工区も、全体で見たらごくわずかな距離かと思われるが、通常の土木プロジェクトで考えると相当長い区間に相当する。川勝知事のような地方政治家が当選する土壌の裏側には、このような過去の経緯もあるわけだ。
●静岡県民は「足を引っ張っている」だけなのか
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