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川勝知事が辞任しても、リニア着工は加速しないワケ

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月18日 8時15分

 一部の論調では「静岡県にリニアが通らないから、足を引っ張っている」と評されることもある。しかし、水枯れのトラウマがあるだけでなく、そのリスクに応じた補償も特に無いのなら、反対に回るのは無理もないのではないか。従って川勝知事が辞任したとしても、一人の政治家の去就がプロジェクトの進行速度に大きな影響を与えるわけではなく、より広範な調整と県民への理解を呼びかける姿勢が必要であると考えられる。

 静岡県民がリニア中央新幹線プロジェクトに反対している主な理由は、環境への影響と地域資源への懸念に集約できる。特に大井川の水資源への影響は、県民の生活に直結する問題だ。静岡県は豊かな自然環境と水資源によって農業や観光業が盛んな地域であり、リニア中央新幹線の工事がこれらの資源に悪影響を及ぼす可能性があるとの懸念から、反対運動が広がっているのだ。

 川勝知事は、このような静岡県民の懸念を代表し、リニア中央新幹線プロジェクトに対して批判的な立場を取ってきた。

 先の選挙で川勝知事が圧勝した背景も、対立候補がリニアを選挙の争点から外したからだと指摘されることもある。裏を返せば「争点から外さざるを得なかった」ともいえる。その点を鑑みれば、川勝知事は県民の声を代弁し、地域の環境保全や資源管理に積極的に取り組む姿勢を支持していることもまた事実だろう。

 しかし川勝知事の影響力は、静岡県内の問題に留まらず、リニア中央新幹線プロジェクト全体に対する国民の関心を高めるきっかけともなった。川勝知事が辞任した場合、彼の後任者がどのような立場を取るか、また、リニア中央新幹線プロジェクトに対する県民の反対運動がどのように進展するかは、依然として不透明だ。少なくとも、川勝知事の辞任が即座にリニア中央新幹線プロジェクトの進行を加速させるわけではないといえる。

●困るのはJR東海側?

 仮に、川勝知事の後任としてリニア推進派が圧勝した場合、困るのはJR東海側になる可能性がある。というのも、他の工区も遅延しているからだ。他の全部の工区が完成する見込みであり、静岡工区だけがスケジュール上取り残されているのであれば話は別だが、実態はそうではない。

 JR東海は4月4日の会見で、山梨県駅の新設と長野県内の座光寺高架橋などにかかる工事についても、開業予定の2027年までに工事を完了させることは難しいと明らかにした。

 3月29日には、丹羽社長自らが「静岡工区のせいで名古屋までの開業が遅れている」旨を発言したにもかかわらず、蓋を開ければそれ以外の工区も27年の開業に間に合っていない。4月4日の会見は、奇しくも3日の川勝知事の辞意表明をうけてのことのようにも思われた。

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