「フロンクス」インドからスゴいクルマがやってきた
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年8月19日 15時5分
では走りはどうなのか。コーナーでフロントに荷重を乗せてステアリングを切り込んでいくと、ノーズの入り方はナチュラル。舵角に対してリニアで安心感が高い。ターンインから旋回に移行していく際もリヤの踏ん張り方が自然で、突如後ろが踏ん張ってヨーを止めてしまうようなアクションを起こさない。ただしこのあたりはグリップが低いウェットのことゆえ、ドライ路面でも同じかどうかは要確認である。
コーナーリングというのはフロントからリヤへタイヤの仕事をリレーしていくものなのだが、少なくとも当日の環境ではそれがスムーズであり、かなりファン・トゥ・ドライブだった。法律の許す範囲で、良きペースでワインディングを楽しめるクルマである。
●コンパクトSUV戦線に大きな一石
気になるポイントはなかったのかと問われれば、いくつかあるにはあるが、ちょっと無い物ねだり感もある。一番気になったのはフロントシートのサイドサポートで、シートの両サイドがバケットシートのように張り出しているのだが、テストコースで本気で飛ばすと、そのサポートがふにゃふにゃで見た目ほど役に立たない。そんな飛ばし方は公道ではしないという前提ならまあそういうものだといえるが、見た目と機能が違うのはよろしくないと思う。
もうひとつ、ESP(車両走行安定補助システム)が作動してどれか1輪のブレーキをかけたとき、キャリバーの振動がボディに伝わってガーガーとうるさいこと。高級車ではないのだから仕方がないと思うものの、静かなクルマだけに気になる。
リヤシートは座っていると尻が前にずれていく。これは膝裏のクッションをもう少し盛るか、クッションストロークに余裕があるなら反対に尻の下を薄くして座面を前上がりにするべきだと思う。スズキのエンジニアは、「いろんな座り方をする人がいるので」と言うが、そんなだらしない座り方をする人のためにシートを作るのは止めたほうがいい。
もう一点、BセグSUVとしてなかなかに優れたフロンクスは、この市場の戦線を撹乱しそうに思うが、純粋に商品力を考えるならば、ストロングハイブリッドも欲しいところ。スズキにとってはBセグメントを牽引する最上位車種になるはずなので、やはりパワートレインに何か役物はほしいと思う。
ただし、スズキが提唱する「小・少・軽・短・美」には深く同意するので、重くなりがちなストロングハイブリッドよりも軽さで戦うのだといわれると、一理あることは認めざるを得ない。
2024年のコンパクトSUV戦線に大きな一石を投じた一台である。
(池田直渡)
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