出荷量減が続く「泡盛」 売上高1.3倍を実現した、酒造所30代社長の「売り方」改革
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月2日 6時0分
今年5月からは、1972年の沖縄の日本復帰から半世紀に渡って続いてきた泡盛の酒税軽減措置の段階的な縮小が始まっており、2032年には完全に廃止される。円安や原材料の高騰も進む中、大半が小規模事業者である酒造所は赤字経営に陥っているところも多い。
●9割が県外客 新規顧客を開拓したユニークな販売戦略
もちろん、各酒造所も手をこまねいているだけではない。多彩なフレーバーや若者向けの飲みやすい商品の開発、泡盛以外の酒の製造、カクテルへの活用、海外販路の模索……。組合も含め、苦境を打破するためにあの手この手を打っている。
中でも、やんばる酒造の戦略はユニークだ。事例の一つが、2020年から始めた「やんばるもあい」である。
「もあい(模合)」とは、沖縄に古くから伝わる相互扶助の文化を指す。気の合う仲間で定期的に集まり、決まった額のお金を出し合って積み立て、必要としている人から順番に金銭を受け取る仕組みだ。
やんばる酒造の「やんばるもあい」では、毎月一定の金額を支払う顧客を「もあい仲間」と見たて、定期的に自社の泡盛や、知り合いの農家らが育てた旬の野菜などやんばるの特産を送る。さらに年に2~3回は酒造所で交流会を開き、沖縄料理と泡盛を囲む。金額は内容で異なり、定期便があるプランは月に1980円~3980円。
始めたタイミングでコロナ禍に入ったため、当初はリアルの交流が難しかったが、返礼品の仕組みは沖縄ファンに刺さった。「沖縄自体ややんばる地域が好きな方が少しずつ会員になってくれて、とても喜んでもらいました」と池原社長。やんばる酒造もコロナ禍で大きなダメージを負ったが、毎月定額で料金を支払ってもらう仕組みは、経営を下支えする要因にもなった。
現在の登録数は約80人で、9割以上が県外の人だという。池原社長は「いろいろな方とつながりを持てたことで、コロナ禍が落ち着いてから直接酒蔵まで会いに来てくれるもあい仲間も増えました。泡盛というコミュニケーションツールを使い、人と人をつなぎたかった。少しずつ形にすることができています」と好感触を語る。
「『やんばるもあい』をきっかけにやんばるのファンになってもらえれば、私たちだけではなく、やんばる全体の利益にもなります」とも言う。事業を通じて人を呼び込むことで地域が活性化し、それが自社の利益にもつながっていくという好循環を描く。
●「自分たちの酒屋じゃない」 2代目の言葉の真意
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