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出荷量減が続く「泡盛」 売上高1.3倍を実現した、酒造所30代社長の「売り方」改革

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月2日 6時0分

 地域のための酒造りは、やんばる酒造にとっての「原点」と言える。

 1950年、酒蔵を構える大宜味村田嘉里地区で、前身である「田嘉里(たかざと)酒造」として創業した同社。「私たちは、戦後復興の中で自分たちが飲むお酒を作るために、地域の人たちが出資してできた酒造所です。一緒に泡盛を飲むことでつながりを強め、みんなで地域を支えていたんです」(池原社長)。

 泡盛は正に地域のコミュニケーションツールとしての役割を果たし、2017年には「やんばる全体を盛り上げたい」との想いから、やんばる酒造に改称した。

 過疎化の進行で今でこそ少なくなったが、地域の人たちが頻繁に「自分たちの酒」を飲み交わす原風景は、1985年生まれの池原社長の記憶にも鮮明に残っている。

 「私が小さい頃は祖父が2代目代表を務めていて、酒蔵は自分にとって遊び場のようでした。ここから徒歩5分ほどの実家や地域の共同売店ではしょっちゅう酒盛りが開かれていて、地元の人が買いに来て酒造所も活気がありました。集落の掃除後の慰労会や祭りなど、イベントごとには必ずと言っていいほどやんばる酒造の泡盛がありました」

 自身は高校を途中退学して将来に悩んでいた頃、慕っていた祖父に「行くところがないなら酒屋で働くね?」と手を差し伸べられ、仕事を手伝うように。「夜に懐中電灯を持って麹の状態を確かめに行ったりして、真剣に酒造りに向き合うおじいちゃんの姿がキラキラして見えました」と振り返る。東京の専門学校で酒造りについて学んだ後、2013年に正式に入社。昨年5月には4代目だった父・池原弘昭さんの後を継ぎ、5代目に就いた。

 憧れた祖父がよく口にしていた、忘れられない言葉がある。「この酒屋は、自分たちの酒屋じゃないんだよ」。地域による、地域のための酒造り。その原点は世代を超え、今のやんばる酒造に脈々と受け継がれている。

●「やんばるつながリキュール」周辺農家らとコラボ

 この信念は、池原社長が入社してから力を入れ始めた新商品開発にも反映されている。それが顕著に表れているのが、2022年に作った泡盛ベースのリキュール「やんばるつながリキュール スパイシーセッション」だ。

 商品の核を成すのは、やんばる地域で昔から親しまれてきた「カラギ酒」。地域に自生するシナモンの一種であるカラキ(正式名:オキナワニッケイ)の樹皮を泡盛に漬け込み、スパイシーな香りを楽しむ伝統的な飲み方である。

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