1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

郊外にあったホームセンターが、なぜ「大都市の駅前」に出店しているのか

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月2日 6時10分

 だからこそ、ニトリのような製造小売の巨大プレーヤーが成長できる余地があったとも言える。しかし「こっちの市場は稼げるぞ」ということで、ホームセンターがどんどん参入してニトリのような動きをすれば当然、血で血を洗うレッドオーシャンになってしまう。

 「ライフスタイルDIY」とか「ホームファッション」とか掲げているスローガンに若干の違いはあるが、品ぞろえもターゲットもほとんど同じだ。つまり、そのうち熾烈(しれつ)なカニバリが始まってしまうのだ。

 このような事態を避けるには、「独自の動き」で専門分野を確立するしかないのではないか。その一つの可能性となるのが、「コメリ」だ。

 ご存じの方も多いだろうが、コメリは農協との提携を進めていて「農家のコンビニ」と評されるほど、地方に根付いている。今のところ東京や大阪のターミナル駅前に進出、なんて動きが一切見えない。

 先日とある地方に行ったとき、農家の人々にどのホームセンターをよく利用しているかを尋ねたら、真っ先に出たのがコメリだった。このような「強力なファン」をどれほど多くつくれるかが、人口減少時代のビジネスでは重要だ。競合が都市を目指す中で、地方の過疎化や高齢化という課題に真っ正面から向き合うスタンスによりエッジを立てて差別化していく、というのもホームセンターの生きる道なのではないか。

 実際、ホームセンターではないが同じような方針を打ち出している企業もある。「無印良品」を運営する良品計画だ。

●「個店経営」を掲げる無印良品

 これまでは大都市の商業施設や繁華街が主戦場だったが、2021年4月に発表した中期経営計画の骨子で、地方や郊外のスーパー隣接地に積極的に出店していくことを表明した。

 この背景には、良品計画が掲げている「個店経営」がある。画一的なチェーンストア経営ではなく、地域の課題に商品とサービスで貢献していくことをビジョンとしているのだ。

 分かりやすいのは、長野県だ。2021年に塩尻市での独立店舗を皮切りに2024年6月には長野市、茅野市などに新店舗をオープン。いずれも駅ビルや商業施設の中ではなく、幹線道路沿いの広い駐車場を持つ店舗だ。

 郊外のホームセンターが駅ビルや商業施設を目指す中、なぜ無印は「逆」をいくのか。この出店を扱った長野放送のVTRの中で、良品計画 営業本部信越事業部長はこう述べているの。

 「車社会の生活圏では、(駐車場がある)立地でないと車でアクセスができないのでこういった土地を選択した。地域の中で愛されるスーパーの真横に位置することで、より日常生活の役に立てるお店になるのではないか」(2024年6月28日 長野放送)

●自動車普及率が全国6位の長野県

 実は、長野県は自動車普及率が全国6位と高い。家族全員がクルマを持つケースも珍しくなく、ちょっとした移動にも使う。そのような地域の特性を鑑みたというワケだ。

 人口激減時代を見据えて、大都市の巨大商圏に「活路」を見い出そうという企業もあれば、地方や郊外の課題解決にこそ、自分たちの存在価値があるという企業もある。

 どちらが吉と出るか凶と出るかは分からないが、消費者が減っていく中で、「好調企業の稼ぎ方をマネる」「景気のいい分野に参入する」という事業戦略がもはや通用しないということだけは、はっきりしているのではないか。

(窪田順生)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください