早期リタイアしたい「20~30代男性」が増えている なぜか?
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年10月28日 6時5分
一方「理由はとくにない」が増加傾向にある。つまり、女性活躍の影響で、養育費や一般常識を理由とすることが減り、代わりに理由はないが漠然と早期リタイアしたいという若手女性が増えている。
このように若手就業者に早期リタイアを望む心理が拡大している背景には、さまざまな社会環境の変化があると考えられる。
一つに「プライベート重視」の若手の増加が挙げられる。これについてはさまざまな調査で確かめられており、例えば、新入社員に「仕事中心」か「私生活中心」か「両立」か、と尋ねたところ、2012年(6.6%)から2019年(17.0%)にかけて、「私生活中心」の割合が増加しているという(※4)。また、2011年から2021年にかけて、「できれば仕事はしたくない」と答える若者(25歳~29歳)が約3割から約6割に増加している(※5)。働き方改革などにより、ワークライフバランスが見直された世相が反映されていると考えられる。
(※4)日本生産性本部(2019)「新入社員『働くことの意識』調査」(参考:PDF 2024年7月26日アクセス)
(※5)独立行政法人労働政策研究・研修機構(2022)「大都市の若者の就業行動と意識の変容―『第5回 若者のワークスタイル調査』から―」(2024年7月26日アクセス)
また、終身雇用や年功序列などの日本型雇用の減少によって、従来のように1つの会社に勤めあげれば定年まで年功序列で昇給することが保証されなくなった。加えて、テクノロジーの進歩による産業構造の変化、賃金の低迷、働き方の多様化など、キャリアを取り巻く環境が急速に変化している。
そのため、若手社員の「キャリア自律」を促進する動きがあるが、新たな時代に適合したキャリア形成のモデルが多様で、不明瞭なために、長期的なキャリアがイメージしづらい。シニアまで働き続けてどうするのか、という明確で安定したビジョンが持てず、早期リタイアを希望しやすくなっている可能性がある。
一方で、シニア活躍が進み、70歳前後まで働く人が身近に増えたため、自分がシニアまで働き続ける将来像に直面させられ、かえってそうなりたくない・自分にはできないという反発が起きていることも考えられる。
最後に、若手就業者の今の仕事に対する意欲が低下しているわけではないので、誤解を避けるため確認しておきたい。早期リタイア希望者は、仕事で成長を感じられていなかったり(20代の傾向)、ワーク・エンゲージメント(※6)が低かったり(30代の傾向)する傾向があるのは確かだが、成長実感やワーク・エンゲイジメントの経年変化を見ると、2017~24年の8年間で大きな変化がない(図表6)。
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