なぜコンビニ以上に調剤薬局があるのか 「クスリを出さない」発想が求められる理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月6日 7時10分
なぜこんなに続々と参入するのかというと、ミもフタもない話をしてしまうと「もうかる」からだ。
日本は診療と薬を分離させる「医薬分業」を推進しているので、調剤報酬が高くなったという経緯がある。どれほど高いのか。日本総研の成瀬道紀副主任研究員によると、日本の薬局の調剤報酬は国内総生産(GDP)比で英国、ドイツの3倍前後だという。(出所:中日新聞 2022年1月12日)
このような背景があれば当然、調剤報酬で食べていこうという人、つまりは薬剤師を志す人も増えていく。
経済協力開発機構(OECD)が加盟国35カ国の人口10万人当たりの薬剤師数を比較したところ、日本はダントツで多かった。2000年には113人で、35カ国平均の1.8倍。それから19年を経て調べたところ190人とさらに増えて、平均の2.2倍だった。OECDはこの状況を「過剰」と評価している。
●調剤薬局が生き残るには
さて、このような薬剤師と調剤薬局を巡る客観的な数字を聞くと、「調剤薬局の倒産が増えている」というニュースの受け取り方も全く変わってくるのではないか。
コンビニやファミレスでも人口減少によるカニバリが起きて、店舗の整理・再編を余儀なくされているこの国で、時代に逆行する形で薬剤師も薬局も右肩上がりで増えていけば、その反動で「淘汰(とうた)」が始まるのは当然なのだ。
こんな分かりやすいレッドオーシャンで、調剤薬局が生き残っていく術はあるのか。個人的には「薬を出さない」という方向性に活路があるのではないかと思う。
一体どういうことか順を追って説明しよう。
まず、王道の方法は「M&Aなどによる規模拡大」である。
厚生労働省の第1回薬局薬剤師の業務および薬局の機能に関するワーキンググループ(2022年2月14日)に提出された資料を見ると、近年、同一法人が運営する店舗数が急速に増えている。2013年に20店舗以上を運営している法人は17.6%だったが、それが年を追うごとに増えて、2021年になると38.4%と4割近くになっている。
調剤薬局も規模が大きくなればなるほどメリットがあることは言うまでもない。薬剤師の処方せん処理枚数は1日40枚(平均)と上限が決まっているので、多くの薬剤師を雇えるところほど収益が上がる。薬を卸から大量に仕入れるので、コスト面で有利になる。
ただ、何よりも大きなメリットは「投資」ができるので、「異業種とのシナジー効果」が狙いやすいことだ。
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