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なぜコンビニ以上に調剤薬局があるのか 「クスリを出さない」発想が求められる理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月6日 7時10分

●WHOも推奨

 これは「薬は毒」みたいな陰謀論的な話ではない。WHOでも抗菌薬の使用を減らすアクションプランを採択しているし、日本の厚生労働省が発行する「抗微生物薬適正使用の手引き」でもこう述べている。

「感冒に対しては、抗菌薬投与を行わないことを推奨する」

 しかし、現実はどうか。皆さんもちょっと体の具合が悪くなると病院に行って、「やっぱり市販薬よりも病院の薬は効くので」なんて言って薬を処方してもらうのではないか。そして、調剤薬局でもそれをもとにバンバン薬が出されていく。

 こういう「過剰処方」という状況に対して「薬のプロ」であるはずの薬剤師、調剤薬局は何をしているのかと疑問に思う人も多い。もちろん、中には「うちの調剤薬局ではずっと注意喚起をしてきたぞ!」という方もおられるだろうが、米国で行われたような業界を挙げたキャンペーンがあったわけではないので、このような問題も世間的にはほとんど知られていない。

 ならば、「薬を出さないことをゴールにした調剤薬局」があってもいいはずだ。

 このような「自己矛盾としっかり向き合う」という捨て身の戦い方は、調剤薬局以外でもできる。例えば、コンビニの店舗は「社会インフラ」ともてはやされながらも、かつて成長エンジンだったドミナント戦略の影響を受けて、都市部や幹線道路などのロードサイドに多く、過疎地には少ない、という問題があった。

 しかし今、その自己矛盾に向き合うかのように、ローソンは過疎地に積極的に出店を進めている。もともとローソンはコンビニ大手3社の中でも地方店を多く抱えており、高齢化率の高い地域で高シェアを保っている。そこでこのような特性を生かして、過疎地に「商機」を見い出そうとしているのだ。

 レッドオーシャンでは、多数派と同じことをするプレーヤーは滅んでいくだけだ。それは裏を返せば、「薬を出さない」に舵(かじ)を切った少数派の調剤薬局が「健康」「美容」「高齢者」「地域社会」などを切り口に、さまざまなコラボやスピンオフを仕掛けていくということでもある。

 コンビニより多い社会インフラ、約6.2万の調剤薬局が今後どのような「進化」を遂げていくのか注目したい。

(窪田順生)

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