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なぜコンビニ以上に調剤薬局があるのか 「クスリを出さない」発想が求められる理由

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月6日 7時10分

 ご存じのように少子高齢化の日本では、医療・年金という社会保障負担が雪だるま式に増えていることもあって、「無駄な医療」を削減していくことが喫緊の課題だ。具体的には、処方する必要のない薬、やる必要のない検査を減らしていくのだ。

 実際、厚労省はかねて過剰な薬の処方を問題視しており、特に高齢者は複数の医療機関を股にかけて多くの薬を処方される「多剤投与」が問題になり、2018年には「高齢者の医薬品適正使用の指針」もつくられている。

 では、具体的にどうやって減らしていくのか。薬を処方するのは診療した医師なわけなので、調剤薬局側で勝手に減らすことはできない。しかし、「無駄な薬を減らす」ことを薬局経営の柱にして、それを独自のカラーにするのは自由だ。

 例えば、千葉県流山市にある調剤薬局「薬局ハカラメディコ」だ。

●カフェ併設の新業態

 薬局ハカラメディコは体に良い食事を日常的に食べて健康を保てば、特に薬など必要としない「薬食同源」をコンセプトに掲げており、薬膳チキンカレーや、体の悩みにあったハーブティーを提供するカフェを併設しているのだ。

 もちろん、大手もカフェ併設を展開しており、そこで健康的な食事などを提供している。例えば、全国に153の調剤薬局を展開する新生堂薬局(福岡市)は2024年9月に福岡で新業態「新生堂ヘルスケアステーション薬院」をスタート。これは計測器で知られるタニタ(東京都板橋区)の「タニタカフェ」とコラボしたイタリアンレストランを併設し、健康的なワンプレートランチやパスタ、ハーブティーなどを提供している。

 今後、調剤薬局の競争が激化していく中で、このような「健康カフェレストラン併設型」は増加していくだろう。だからこそ、個人経営の調剤薬局はそこからさらにもう一歩踏み込んでいく。つまり、「食事で健康をサポート」するのではなく、「最終的には薬に頼らない状態を目指す」と打ち出すことで、大手と明確に差別化していくのだ。

 もちろん、病気ならば薬は必要だ。しかし、ちょっと熱が出た、咳が出たくらいで抗生物質を処方するような国は世界では少ない。

 例えば、米国でも高額な医療費の抑制を目指して今から10年ほど前、医師らで構成する非営利組織、米国内科専門医認定機構財団(ABIM財団)が中心となって、「Choosing Wisely」(賢い選択)というキャンペーンが行われた。

 そこでは、無駄なCT検査などとともに「抗菌薬はウイルスに効果なし」ということが繰り返し訴えられた。むしろ「害」のほうが大きいという指摘も多かった。抗菌薬は腸内細菌に影響を及ぼし、体にとって必要な菌まで殺してしまうからだ。しかも繰り返し服用すれば、「薬剤耐性菌」が発生しやすくなるというリスクもある。

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