フジテレビの「ガバナンス不全」 日枝久氏の「影響力」の本質とは?
ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月8日 17時56分
BBCによるジャニーズ問題の取材は、放置することが問題を広げる要因になることを教えた。BBCはサヴィル氏の問題によって、その教訓を知っていたからこそ取材に取り組んだのだ。その意味で、過去の反省を生かしたといえる。裏を返せば、反省を生かさず、何も取材しないことの方が罪なのだ。
●幹部の生殺与奪は、人事権を持つ日枝氏に
翻ってフジテレビはどうだろうか。会見の中で再三、質問が出たのが、日枝氏についてだ。彼はフジテレビの取締役相談役で、FMHの取締役相談役でもある。
フジテレビの労働組合は、2度に渡って日枝氏に会見への出席を求めた。にもかかわらず、日枝氏が会見に登場しなかったのは周知の通りだ。出席しなかった理由についてFMHやフジテレビの幹部は口をそろえて「業務の執行にはタッチしていない。業務執行をし、代表権のある私たちが対応する」と回答した。自分は「とかげのしっぽ」になってしまったにもかかわらず、日枝氏を守ろうとしているのだ。
「なぜ日枝氏は影響力があると他者から考えられていると思うか?」という質問についてFMHの金光修社長は「分からないが、在籍年数が長いから影響力が大きいんだと判断されているのだと思う」という見解を示した。フジテレビには「自由な雰囲気、紳士の気質、人情味がある」とも話し、日枝氏に関して「企業風土の礎をつくっているということに関しては間違いないと思う」とも話している。
では、そもそも経営層の仕事とは何なのか? 大まかに言えば、経営戦略の策定など会社の方向性、企業文化の形成、財務管理、人材(人事と育成)管理だ。
これらを踏まえて日枝氏はどんな影響力を持っていたのか。業務に関与していないのであれば、それにつながる財務管理もしていないだろう。現在の日常業務も分からないので、経営戦略を打ち出すことにもあまり関わっていないと考えられる。一方で、金光社長がコメントしているように、企業風土については日枝氏が形成してきた部分もあるだろう。
そういった背景を考慮すると、日枝氏の力の源泉は人事権にあると考えるのが自然だ。1988年に社長に就任し、1992年に創業家の鹿内宏明氏を追放してからはずっと権力のトップにいた。それ以降、取締役以上に就任した人々は、必ず彼の息がかかっているといわれている。それが本当だとすれば、現在も「誰も彼に頭が上がらない」のではないか。
経営層の言う通り、論理的に考えれば、記者会見に出てこないのは代表権がないからだというのは理解できる。ただ、一般社員が大変な思いをしている事情に鑑みれば、ここはフジテレビ特有の“人情味”を出して、自ら会見に出席するべきだったのではないか。それが越権行為ならば、取締役会で会見に出ることを議決すればよかったのかもしれない。だが、取締役は皆、日枝氏に引き上げられた人材ばかりだ。誰も記者会見への出席を促したり、決議したりはしなかった。
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