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フジテレビの「ガバナンス不全」 日枝久氏の「影響力」の本質とは?

ITmedia ビジネスオンライン / 2025年2月8日 17時56分

 港前社長は「刺激を与えたくなかった。『私(X子さん)のせいで打ち切りとなった』と考えてもらいたくなかった」と発言した。だが、この論理で納得するステークホルダーは皆無だろう。筆者も首をかしげたくなる。もしX子さんの精神状態を考えるなら、露出を減らしたほうが、「中居」という言葉に接触する機会が減るので、より精神状態が安定すると考えられるからだ。

 パリ五輪の特番に彼を起用しようと考えたスタッフは、中居氏の状況を知る由もない。上層部から止められることもなかった。「できるだけ少人数」の方針は、結果的に露出を増やす方向に働いたのだ。ましてや中居氏は旧ジャニーズ事務所のタレントである。一連のジャニーズ問題によって各局が新規の起用をためらう中で「彼を起用しても大丈夫」という雰囲気がフジテレビ内にあったという証明でもあり、会社全体として人権に対する意識が高くなかったと見られても仕方がない。

 会見では港前社長が「結果的に番組を作って数字は取りたいです。どの番組も」と話し、本音も見え隠れした。「だれかtoなかい」は人気番組だったので、番組終了をできるだけ遅らせたかったのだろう。

 結果的に「できるだけ少人数」ではなく「必要最小人数」で取り組んだ方が良かった。コンプラ室長だけに共有するという手段もあったはずだ。その道のプロであるコンプラ室が関われば、今とは違う結果になっていた可能性はあった。

●名著『失敗の本質』と重なるフジテレビ

 フジテレビのやり直し会見2日前の1月25日、経営学者で、累計100万部超の名著『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』(中公文庫)の著者の1人である野中郁次郎氏が亡くなった。

 この本は、なぜ日本軍が太平洋戦争で負けたかを組織論から分析したものだ。記者会見でも清水新社長がこの本について言及した。「(フジテレビの)企業風土について悪い点が出てしまった。『失敗の本質』にも出ていますが、組織にある上意下達の点。情報のたこつぼ化。目的が明確でなくなってしまっていること、取り違えてしまうこと。これらが、対応の面で(悪い方に)出てしまったと感じている」

 この本に書かれている事例と、フジテレビの問題は重なる部分がある。日本軍でも上意下達によって、情報が上から下まで共有されない事態が起こった。フジテレビでもX子さんの希望とはいえ、情報を最少人数でとどめておくとしても、コンプラ室に共有するべきだっただろう。

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