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「想星のアクエリオン」のすべて キャラデザ決定の舞台裏から特殊な制作手法まで、糸曽監督にインタビュー

ITmedia NEWS / 2025年1月9日 11時17分

 一方で、製作委員会方式には、リスク分散のメリットがあります。

 例えば、1本の作品に10億円をかけるのではなく、複数の会社が1億円ずつ出資して10本の作品を作り、その中で1本でもヒットすれば、出資した会社はそれぞれの得意分野でビジネスを展開し、投資を回収することができます。そして、回収した資金を元に、次の作品を制作することができます。

 このように、製作委員会方式は、リスクを分散しながら、継続的に作品を生み出すことができる仕組みとして、理にかなっていると思います。私自身も、製作委員会方式には大変お世話になっていますし、否定するつもりは全くありません(笑)。

 ただ、1つ気になることがあります。それは、製作委員会方式で作品を作っているクリエイターの中には、さも自分が全責任を負っているかのように、「ああしたい、こうしたい」と自分の理想を主張する人が多いということです。しかし、作品がヒットしなかった場合、彼らはどのように責任を取るのでしょうか。

 自分の理想を追求した結果、作品が失敗に終わっても、彼らは責任を負う必要はありません。なぜなら、リスクは製作委員会全体で分散されているからです。これは、自己資金で作品を制作した経験がある私からすると、少し違和感があります。自己資金で制作する場合、作品が失敗すれば、全ての責任は自分自身にあります。そのため、クリエイターは、常にリスクを意識し、責任感を持って作品づくりに取り組む必要があります。そこで、今後は、私自身も製作委員会に出資する側に回ってみようと考えています!

――おお! それは新しいですね

糸曽:そもそもそれが許されるかは分からないですが(笑)。でも、本作とは別案件で、向こうからそういう提案もいただいたことも実はありますし、本作でも製作委員会の皆さんとお仕事させていただく中でいろいろ勉強させてもらってもいます。クリエイターもリスクを負うことでヒットしなかったときの責任もとれるし、何よりもいろんな数字も見せてもらえるので面白いと思うんですよね。

――音楽やマンガの世界では、SNSでの活動を通じてリスクを取りながら、直接ビジネスにつなげているクリエイターが生まれていますが、確かにアニメだと資金が必要となるので、そういった動きをされている人はまだまだ少ないと思います

糸曽:「サンタ・カンパニー」は私が100%権利を持っているので、例えば図書館に卸すとか、複製原画などを資料や教材として販売するとか、金額は大きくないけれどテレビ・配信作品とは違う時間軸でやれることっていろいろあるんですよね。時間軸という意味では、22年に学生たちと手掛けたYOASOBIのミュージックビデオもありますが、かつて自分のもとで学んだ学生たちが、本作『想星のアクエリオン Myth of Emotions』でスタッフとして合流してくれていて、商業アニメーションと学生とのプロジェクトもある意味「未来への投資」で地続きだということも実感しています。

――なるほど。今回の「想星のアクエリオン」も楽しみですし、糸曽監督のこれからのチャレンジにも引き続き注目していきたいと思います。今回はお忙しい中、長時間ありがとうございました

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