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「想星のアクエリオン」のすべて キャラデザ決定の舞台裏から特殊な制作手法まで、糸曽監督にインタビュー

ITmedia NEWS / 2025年1月9日 11時17分

――どのようなきっかけでこの手法を試そうと思ったのでしょうか?

糸曽:実は、以前からこの手法に興味があり、いつか試してみたいと思っていました。きっかけは、絵コンテを描く作業に対する苦手意識です(笑)。

 絵コンテは、監督が一人で頭の中でイメージを膨らませ、それを形にしていく作業です。非常に孤独な作業であり、精神的に追い詰められることもあります。また、絵コンテの段階では、まだ映像として完成していないため、他のスタッフにイメージを伝えるのが難しいという側面もあります。もっと効率的に皆でアイデアを出し合いながら制作を進める方法はないかと模索していました。

 これまで、実写作品を手掛ける機会は何度かありました。実写の現場では、カメラマンや照明スタッフ、美術スタッフなど、さまざまな人がそれぞれの専門知識を生かし、アイデアを出し合いながら作品を作り上げていきます。こうした制作スタイルを、アニメーションでも実現できないかと考えたのです。そこで実写映像をベースにアニメーションを制作するという手法を思い付きました。

 実写映像はいわば「動く絵コンテ」です。実写映像があれば、アニメーターや演出家だけでなく、声優や音響スタッフなど、制作に関わる全ての人が、具体的なイメージを共有することができます。それぞれの立場からアイデアを出し合い、より良い作品を作り上げていくことができるし、カメラワークや構図、演技などを事前に検証することができます。これにより、アニメーション制作における試行錯誤を減らし、効率的に作業を進めることができると期待しました。

――今回、作画の時点でははまらなかったかも知れませんが、プリプロの段階では生かせたということですね

糸曽:その通りです。脚本を文字で読んで面白いと思ったけど、声に出して読んでもらったら「ん?」となることがあって、シリーズ構成の村井さんにその場で直していただいたりもしていました。加えて、今回は「前世」という世界観が重要で、前世で起きた出来事が現世の記憶によみがえってくるという複雑な設定なんです。さらに、前世では性別が違っていたりもする。そういったさまざまな影響を意識しながら演じるのは、声優さんにとってかなり難しいんですよ。

 でも、実写映像があったおかげで、声優さんたちも役柄を理解しやすかったんじゃないかなと思います。私の頭の中だけでなく、声優さんたちも含め、皆でアイデアを出し合いながら、より良い表現方法を探ることができたのは、本当に良かったと思っています

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