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「想星のアクエリオン」のすべて キャラデザ決定の舞台裏から特殊な制作手法まで、糸曽監督にインタビュー

ITmedia NEWS / 2025年1月9日 11時17分

 この「翅」は、単なる羽根ではなく、感情がオーラのように具現化したもので、生物的な存在として描かれています。そして、ある出来事がきっかけで、天翅族は「翅」を失ってしまい、その影響は現代にまで及んでいるのです。

●TVアニメでも少ない「全編実写で撮影」

――コロナ禍という状況下で、制作体制も特殊だったそうですね

糸曽:はい。おそらくテレビアニメとしては他にあまり例がないと思いますが、本作ではまず全編を実写で撮影するという手法を取りました。屋外のシーンは実際に江の島で、屋内のシーンはスタジオで撮影しました。約20分×12話で合計240分、つまり4時間ほどの映像を、声優・役者志望の方々に協力いただき、撮影しています。

 なぜこのような手法を取ったかというと、声優・役者志望の方々に実写で演じてもらうことで、キャラクターの動きや表情、せりふの間などをよりリアルに捉え、アニメーション制作に生かすことができると考えたからです。実写映像は、多数のカメラで撮影し、さまざまなアングルからベストショットを選びました。その後、私が自ら編集作業を行い、アニメーションのレイアウトや演出の参考にしてもらおうと考えました。

 実は、当初は絵コンテを廃止して、実写映像をベースにアニメーションを制作しようと考えていました。しかし、一部のスタッフや外部の会社の中からは、「絵コンテがないと、どのように作画すればいいのか分からない」という意見が多くでました。私の考えが少し早すぎたのかもしれません。結果として、私が大半の絵コンテを描くことになりましたが、これはこれで良い経験になりました。

 ただ、実写映像が完全な無駄になったわけではなくて、実写撮影を行ったことで、頭の中の世界観やストーリーが整理され、より具体的なイメージを持って制作に取り組むことができたと感じています。例えば、キャラクターの配置や動きのイメージ、カメラアングル、背景の雰囲気などが、実写映像を通して明確になりました。また、江の島の実際の風景を元に背景を描き起こすことができ、レイアウト作成の効率も上がりました。

――なるほど。実写映像をビデオコンテとして活用することを目指されていたわけですね。ちなみに、作画用紙に映像が配置されているのはなぜでしょうか?

糸曽:はい。アニメーターが実写映像を参考にしやすいように、タップ穴のある作画用紙に映像を配置しました。実写映像を見ながら、キャラクターの動きや表情、タイミングなどを把握してほしいという意図ですね。デフォルメされたキャラクターであっても、人間の自然な動きを再現することで、より生き生きとした表現が可能になると考えました。

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