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「想星のアクエリオン」のすべて キャラデザ決定の舞台裏から特殊な制作手法まで、糸曽監督にインタビュー

ITmedia NEWS / 2025年1月9日 11時17分

 もしキャラクターがリアル寄りであれば、実写映像をそのままトレースする「ロトスコープ」という手法で制作することもできたかもしれません。しかし今回はデフォルメされたキャラクターなので、その手法は使えません。そこで実写映像を参考にしながら、アニメーターが手描きでアニメーションを作成するという方法を採用しました。

 また、アフレコの際にも、声優さんたちに実写映像を見てもらい、役作りや演技の参考にしてもらいました。声優さんたちからは、「実写映像があることで、キャラクターの感情や状況を理解しやすかった」という意見をいただきました。事前に実写映像を見ることで、声優さんたちも役を深く理解し、より自然で感情豊かな演技をしてくれたと感じています。

――サンを演じる宝塚歌劇団出身の七海ひろきさんをはじめ、舞台の経験のある声優さんからすると、むしろ受け入れられやすく、「さらに高みを目指そう」となったかも知れませんね。アニメ映像やコンテ撮ではなく、モーションアクターの方々の演技を見て声を入れられているわけですものね

糸曽:そうなんです。12月7日に立川で先行上映会を行いましたが、そこに登壇した声優さんたちも、完全なアニメの映像としては初めて見たことになります。また、作画の段階でも実写映像を3Dレイアウトのように使いたかったわけですが、今回発見したのは、アニメを作る際はアニメーター、演出家をはじめとするクリエイターが演技を考えないといけない、つまり役者を兼ねているということです。

 でも、彼らは演技をしたことはほとんどないわけですよね。例えば「ものを取るってこうだろうな」って想像しながら「ものを取る」動作そのものに注力して描いている。でもプロの役者さんにお願いすると、「ものを取る……これだと間が持たないな」と感じたら、なにか別の動作をアイデアとして加えてくれたりするわけです。その発想はなかったなと今回気が付きました。「この間だとこういう演技を加えたら良いんだ」って勉強になりましたね。

――予備動作なども含めた、いかにもアニメって動きではなくて、より自然だったり、所作自体により感情が乗る、といったことが起こりうるはずだと

糸曽:アニメーション制作では、限られた作画枚数の中で、いかに効果的にキャラクターを動かすかが重要になります。そのためアニメーターは、多くの動きの中から、どの動きを描き、どの動きを省略するかを常に考えながら作業しています。今回は実写映像を参考に作画を行うという試みも行いましたが、アニメーターの中には、どの動きを選べばいいのか迷い、結果として実写の動きを全てトレースしてしまい、作画枚数が膨大になってしまうケースもありました。これでは効率的ではないので、最終的には私が絵コンテを描き直すことにつながったのですが(笑)。

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