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[上田令子]【ホントに必要?“東京都迎賓館”】~国や民間施設の有効活用こそ必要~

Japan In-depth / 2015年5月21日 7時0分

今年度予算に調査や設計の費用約1億円を盛り込んで、賓客をもてなすため2020年オリンピック・パラリンピックまでに建設しようとしている。確かに、このような瀟洒な施設をつくる予定であれば、新たに500億円を新国立競技場に支払えるわけもなかろう。

また、パリ大学で学んだ知事は「赤坂迎賓館はベルサイユ宮殿のまがいもの」とし耐え難く、迎賓施設の元祖「延遼館」を復元したいのであろうが、果たして本当に、東京都が国の迎賓館とは別に新設する必要があるのだろうか?

私は舛添知事の「都市外交」の定点観測の一貫として、情報公開や委員会資料請求を重ねてきている。儀典長(当時)による海外出張は、東京都の呼びかけで平成13年に設立された「アジアネット21」のみであった。(なお現在、この「アジアネット21」は、形骸化が指摘され中止を視野に入れて見直しがはかられている。)

都の局長クラスの給料をもらって、海外には1回しかいかず、一体普段は何をしていたかということで儀典長の出張先一覧を情報公開請求した。そこで図らずも判明したことは、「都市間交流」に民間施設がかなり利用されているということだ。儀典長の2012年5月から2014年3月までの間、帝国ホテル21回、ホテルオークラ17回、ホテルニューオータニ13回を活用していた。

遼館復元を公表した際、知事が「民間の施設を使ったということになると、相手からすると少し格が下がったことになります」と語っていたが、実際は大いに民間施設を利用しており、知事室でも賓客と会談している様子が報道されていることから、これまでなんら問題は発生していないのだ。

今度は、総務委員会にて既存施設での賓客対応を質したところ「目的に応じ美術館、庭園など都の施設を活用した接遇」を行っているとのこと。さらに都内にある迎賓施設を把握しているか資料では迎賓館赤坂璃宮、外務省飯倉公館、三田共用会議所を提出してきたものの、「都単独の利用実績はない。設置目的も、稼働状況も承知していない」と明言。既存施設を確認することもなく新しく迎賓館を建てようという姿勢には呆れるばかりであった。

私は都立三田高校卒なのだが、三田共有会議所に人が出入りしていることを見たことがなく一体なんの施設だろうといつも思っていた。あまり活発に使っているように見えないこうした既存迎賓施設を有効活用すれば、東京都専用の新しい迎賓施設などいらないはずだ。

また、今年3月に策定された「東京都長期ビジョン都市戦略6」では「日本の成長を支える国際経済都市の創造」を掲げている。であればこそ、東京都の民間施設を大いに賓客をもてなす国際交流、都市間交流に活かせば、民間企業の成長を促し、人材を育て、ひいては税収増につながるのではないか。

ひとたび公共物を建設してしまえば、維持管理に税金がかかることから、民間や都民が負担するものはあっても得るものはなかろう。東京都は、あくまでも都市間交流事業に集中し、迎賓館は国や民間施設を活用すべきである。

新国立競技場も延遼館もそもそもいらなかったのではないか。今あるものを手直ししながら、大切に使っていく質素を旨とする精神性こそが日本人が残すべき、そして世界に発信すべき「レガシー」なのだから。

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