自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
Japan In-depth / 2016年11月13日 23時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
陸上自衛隊は情報、火力、防御力すべての面でとても先進国の軍隊とはいえないお寒いレベルである。率直に申し上げてトルコは勿論、中国以下である。このため駆けつけで激烈な戦闘を行った場合、他国の何倍も戦死者や四肢を失う隊員が発生するだろう。
今回の南スーダンに派遣されている車輌は殆どが非装甲の車輌であり、駆けつけ警護の交戦において射撃されれば当然ながら弾は貫通する。自衛隊の装甲車の防御力が低いのは問題だ。この種の任務に主として使用されるのは4輪の小型装甲車である軽装甲機動車と8輪の96式装甲車であるが、現在南スーダンに派遣されているのは軽装甲機動車のみだ。両車輌とも機動力が弱い。それは陸幕が路上での運用しか想定していなかっためであり、路外では走行は極めて困難である。中東やアフリカの乾燥地でも機動性が危惧される。
そして耐地雷性能が殆ど考慮されていない。特に96式は車体下部構造が凹型なので、むしろ地雷の威力を強めてしまう。しかも近年の装甲車では常識の触雷の衝撃を緩和するフローティングシートや四点式シートベルト、衝撃吸収用の床材なども使用されていない。このため対戦車地雷を踏むとほぼ確実に大損害を出す。乗員は生き残っても、脊椎の破裂骨折、頸椎損傷による麻痺等、その後の人生に大きな影響を及ぼす後遺症を抱える可能性が高い。当然ながら最近問題となっているIED(Improvised Explosive Device:即席爆発装置)に対する防御も殆ど考慮されていない。
紛争地では地雷を1発だけ埋めるとは限らない。紛争地域でポピュラーなのはソ連規格のTM57対戦車地雷だがこれを2つ、3つ重ねたり、地雷の下に榴弾や迫撃砲弾を収束して埋めることも多々ある。また自己鍛造型地雷も多く使用されているが、これを防ぐためには車体下部の装甲にするなどの対処が必要だが、自衛隊の装甲車には当然そのような備えはない。
筆者は実際に南アフリカ軍の陸軍戦闘学校で、紛争地で多用されているソ連製のTM57地雷を3個耐地雷装甲車キャスパーの車輪下で爆破させるデモンストレーションを見たことがあるが、車体は10メートルほど宙を舞った。如何に耐地雷装甲車でも乗員は無傷では済まない。これが耐地雷構造を有しない自衛隊の装甲車であればどうなるだろうか。
陸自では近年邦人救出用にオーストラリア製の耐地雷装甲車、ブッシュマスターを導入したが、南スーダンにはこの種の車輌を出すべきだ。陸幕はこの車輌に乗っていれば触雷しても無事だと思いこんでいる。このためAPC型(Armoured Personnel Carrier:装甲兵員輸送車)だけ導入している。だが本来触雷した車輌を回収する回収車、装甲救急車が必要だ。ところがこれらを導入する予定はないらしい。(当初4輌のAPCを導入し、更に追加でAPCを4輌要求している)。
この記事に関連するニュース
-
現代戦じゃ絶対ムリ!?「屋根なし戦車」パッと見キケンなのにナゼ? 実は大きなメリットも
乗りものニュース / 2024年7月21日 9時42分
-
ついに出た「軍用ジムニー」ゴリッゴリの武装可能!? 欧州の名門メーカー初めて「ジムニーで作ってみた」
乗りものニュース / 2024年7月4日 18時42分
-
装甲車を超えた!? ランクル“防弾仕様”がスゴイ! 手榴弾にも耐える!?「とにかく300系がベスト」な理由
乗りものニュース / 2024年7月2日 18時12分
-
ベストセラー戦車の最新型「もういいです」イタリア向け3国共同開発が頓挫か “乗り換え先”の戦車とは
乗りものニュース / 2024年6月30日 11時12分
-
「自衛隊も太鼓判」北欧メーカーの新型装甲車パリデビュー! 欧州の将来を担うかも!?
乗りものニュース / 2024年6月25日 16時12分
ランキング
-
1バイデン大統領はなぜ選挙から撤退したのか 高齢と認知の違い
Japan In-depth / 2024年7月22日 9時28分
-
2【ヤクザサミット2024in横浜に密着】関東暴力団トップ、マル暴40名が駆けつけた「炎天下の極秘会合」が開かれたワケ
NEWSポストセブン / 2024年7月22日 7時15分
-
3東海道新幹線、運転見合わせ=浜松-名古屋で終日―保守車両脱線、2人けが
時事通信 / 2024年7月22日 22時25分
-
41300ccの大型バイクが橋から転落、死亡したのは52歳の男性と判明…3人でツーリング中に先頭を走行 北海道で大型バイクの事故相次ぎ、2日間で3人死亡
北海道放送 / 2024年7月22日 10時44分
-
5大規模な新幹線トラブル、今年に入り相次ぐ 停電、オーバーラン、油漏れと原因さまざま
産経ニュース / 2024年7月22日 15時29分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)