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自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編

Japan In-depth / 2016年11月13日 23時0分

だが、それだけ「コスト削減」して軽装甲機動車の単価は概ね他国の同等の装甲車の3倍程度、約3千万円もする。それどころか来年度の概算要求では5千万円に跳ね上がっている。因みに諸外国ではトヨタのランドクルーザーの駆動系を流用した軽装甲車が多く開発されているが、軽装甲機動車よりも車内容量が大きく、静粛で価格は1千万円程度である。

軽装甲機動車は数の上では陸自の主力装甲車で、陸自ではAPC(装甲兵員輸送車)として使用されている。だが、世界で4人乗りの小型の装甲車を主力APCとして使用しているのは筆者の知る限り陸自だけである。通常この手の軽装甲車は偵察、連絡、対戦車、パトールなどの任務に使用される。

しかも陸自のAPCとしての運用も実は異常である。軽装甲機動車の部隊は下車戦闘においては乗員が全員下車し、車輌には鍵をかけて放置する。これは機械化歩兵のメリットを自ら放棄していることを意味している。軽装甲機動車の部隊では下車した部隊は徒歩で車輌に戻る必要があり、迅速な昇降は不可能であり、必要なときに装甲車を呼び寄せられない。

また軽装甲機動車には車輌固有の武器も搭載されていない。これが通常のAPCであれば、専用の火器を備え、車輌要員が搭乗しているので下車歩兵部隊と協調作戦が可能である。車載機関銃などで下車部隊を援護したり、必要に応じて下車部隊に接近して速やかに収容、移動が可能である。例えば敵からの砲撃が予想される状況においては車内に退避すれば下車歩兵の生存性は大きく高まる。また軽装甲機動車の部隊では中隊長車輌以外車載無線機が搭載されていない。このため一旦下車した下車歩兵部隊はより出力の高い車載無線を使えないので、部隊の通信機能は低い。

更に4名乗りのために1個分隊を2輌の軽装甲機動車に分ける必要があり、分隊長の指揮が行いにくい。軽装甲機動車のみで構成された部隊は、防御力、火力、運用性で大きく劣っている。

仮にPKOなどで全員が下車すれば敵対勢力に容易に車輌を奪われ、逆襲される事態が想起される。だがそれを防止するために仮に武装を施し、1~2名を車輌に残せば、下車歩兵の数は25~50パーセント減少することになる。

何故このようなことになったかというと、8名の下車歩兵が搭乗できる96式を多量に導入すると、乗員を含めた車両部隊が必要となる。そのためには普通科連隊の数を減らして、車輌部隊を新設する必要がある。そうなれば連隊長のポストも駐屯地も減る。これを嫌ったのだろう。そうして世界でも全く例のない、小さな車体の奇妙なAPCとしての運用が始まったのだ。このため多くの自衛隊普通科部隊では、まともな機械化部隊としての機能を有していない。

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