自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
Japan In-depth / 2016年11月13日 23時0分
このようなRWSを用いれば車長はキューポラから顔を出さずに、昼夜問わずに索敵や攻撃が可能である。ズーム機能と安定化装置がついていれば、動いて遠くの目標も正確に攻撃できる、また対狙撃手対策にも有用である。さらに前進観測員の持つGPSと連動することで7.62mm機関銃の測量射撃により塹壕内に隠れた敵も掃射できる。これを自衛隊は有していない。更に申せば諸外国では一般化しているSA(Situational Awareness:情報把握)システムもない。RWSは遠距離の索敵には有利だが、視界が狭い。このため車体前後左右にビデオカメラを搭載する車輌が増えている。我が国の10式戦車も搭載しているが、更に諸外国では一箇所に複数のカメラを装備し、モニター上で画像を合成して広い視野の監視ができるシステムもあるが、既にトルコの装甲車でもこれを装備しているが、自衛隊にそのようなシステムを搭載した装甲車両は存在しない。
軽装甲機動車にしても96式にしてもせいぜい80年代までしか通用しない旧式な発想の装甲車である。いずれにしても両装甲車ともに、防御力、特に地雷やIEDに対する防御力、火力、情報把握能力、機動力はどれをとっても低く、とても現代の一線で使用する装甲車とは言えない。前編で紹介したヘルメットなどの個人装備も含めて、防御力の欠如によって自衛官が死傷する可能性は、諸外国の部隊、特に他の先進国の部隊に比べて極めて大きくなるといえよう。
しかも更に大きな問題は陸自の行き過ぎた秘密主義である。陸自は装甲車の防御レベルを現場の隊員は勿論、指揮官レベルにまで教えていない。このため戦闘時において指揮官は判断に迷う。仮に指揮官が機銃には耐えられると判断して装甲車を出させたら蜂の巣になりかねない。
この過剰な秘密主義は文民統制上も大きな問題である。民主国家であれば当然公開しているような情報を隠すので、自衛隊と他国の装備などの比較がメディアにおいて極めて困難になっている。防衛省や自衛隊はこれにより批判を避けているのだが、政治や納税者の監視が担保されていない。第三者の批判に晒されないために、自家中毒を起こしており、諸外国ではありえないような浮世離れした装備の調達が諸外国の何倍もの価格で調達されている状態が恒常化している。
(その5に続く。その1、その2、その3。全5回)
参考 STANAG4569 (NATO加盟国間の装備規格の1規格。軽装甲車両・輸送
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