自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その4防御力編 後編
Japan In-depth / 2016年11月13日 23時0分
96式装甲車の戦闘重量は14.5トンで防御力は公開されてはいないが、NATO規格のレベル1に相当する、7.62ミリ弾に耐えられる程度である。PKO用の96式装輪装甲車(II型)のみは、防弾鋼板のモジュラー式増加装甲が装着されているが、恐らくNATOレベルII程度であろう。であればドラグノフなどの徹甲弾で貫通される。徹甲弾を使った狙撃には極めて脆弱である。しかも防御力の強化によって重量が増加し、ただでさえ低い走行性能が更に低下しているだろう。増加装甲が複合装甲であれば同じ防御力でも軽量化ができたのだが。
また96式装輪装甲車(II型)の車長用キューポラには左右に防盾(ぼうじゅん)を装備しているが、防御が不十分だ。後部はハッチがあるにしても前方はがら空きである。また左右の防弾板にしても高さが十分ではない。対して諸外国では全周的に装甲板や防弾ガラスで覆った無天蓋の銃塔を採用することが多い。車体から身を乗り出した車長は装甲車で最も脆弱であり、狙われるからだ。諸外国の実情を調査していればこのような幼稚な「改良」はできないはずだ。
先進国ではこの種の任務において、既にレベル3~4の防御力を付加した装甲車を採用する国が増えており、またRPGなどの携行対戦車兵器に対する格子式装甲やマット式装甲を装着するケースも増えている。他国の8輪装甲車はどうだろうか。例えばフランス陸軍の主力8輪装甲車、VBCIの最大戦闘重量28トンであり、防御レベルは基本的なモジュラー装甲を装着した状態でレベル2レベルの防御力があり、近年は対戦車兵器用の格子型装甲をアフガンなどでは装備していたが、更にマット装甲と新型のスラット装甲を付加することが決定されている。
96式の武装は12.7ミリ機銃または96式40ミリ自動擲弾銃であるが、後者は殆ど調達されていない。これは高価な上に作動不良が多いためである。しかも96式40ミリ自動擲弾銃はわざわざ規格をNATO規格の40×53ミリではなく、国内規格の40×56ミリ弾であり米軍や他国の軍隊との互換性がない。
12.7ミリ機銃は射程も長く強力だが、曲射ができない。このため掩体の影に隠れたり、直接照準ができない目標は不得意だ。対してグレネードランチャーであれば曲射が可能である。なお、新たに採用されたAAV7は12.7ミリと40ミリグレネードランチャー、Mk19の両方を搭載している。
また諸外国で広く装甲車輌使用されているRWS(リモート・ウェポン・ステーション)もない。現在技本(日本製鋼所)で開発しているが、既に中国を始めとして途上国でもRWSを装備している国は多い。RWSは機銃などの火器とビデオカメラ、暗視装置、レーザー測距儀、安定化装置、自動追尾装置などを組み合わせたものであり、オペレーター(車長また砲手)が車内から操作を行う。安価なものは暗視装置や安定化装置、自動追尾装置などはついていないが、現在先進国のRWSは大抵装備されている。
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