1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 政治

自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編

Japan In-depth / 2016年11月17日 11時0分

ではメディック、いわゆる衛生兵はどうだろうか。実は自衛隊のメディックも麻酔を投与ができないのだ。諸外国のメディックは高度な医療技術をマスターした専門家で、心電図モニター、超音波診断機器を駆使して、傷病者の緊急度を判定、治療の優先順位を判断することに長けているし、投薬、注射、簡単な手術もできる。

前線に配置されているのは准看護師であるが、医師法の規制があり、他国のメディックのような応急処置ができない。我が国の救急救命士は第一線に配置されていない。このため、現場で隊員を見殺しにするしかない。しかも陸自のメディックは少なく、隊員250名あたり1名しかいない。我が国からODAを受けているヨルダン軍では15名、1個分隊に1名である。

更に申せば自衛隊の部隊の医官の充足率は2割を切り、インターンに至ってはゼロである。駐屯地に医官がおらず、違法営業をしている医務室は少なくない。薬剤官でも無い、医療資格を持たない衛生官が売薬を渡している駐屯地医務室すらある(処方が必要な薬品を薬剤官=薬剤師が処方するのは違法なため)。海自の護衛艦でも本来1隻に1名医官が乗艦していることになっているが、実態はほとんどいない。

防衛省は国内で起こりうる脅威としてゲリラ・コマンドウ事態、島嶼防衛などを挙げているが、このお粗末な衛生の体勢で実戦が可能だと思っているのだろうか。実戦を行えば死体と、手足を失う隊員の山を築くことになるだろう。自衛隊はどうせ戦争なんぞおこるはずがない、と高をくくっているのだ。だから戦場衛生を軽視してきたのだ。演習では実弾は飛んでこないから、それに備える必要はない、というわけだ。

確かにPKOでは国内部隊よりも手厚い衛生部隊が随行しているが、それでも途上国より見劣りしているのだ。諸外国では下車歩兵一個分隊に一つは折り畳み式の担架と後送に必要な救急品一式のセットを携行しているが、これまた陸自には存在しない。そして患者集合地点から負傷者を運ぶための装甲野戦救急車も一台も存在しない。これらは途上国ですら装備しているのに、だ。

それでも昨年中谷防衛大臣、岩田陸幕長は共に記者会見で筆者の質問に答える形で陸自のPKO用の「個人携行救急品」は米軍の最新のIFAKIIと同等であると記者会見で強弁した。だが、本年に発表された平成28年度防衛省行政事業レビュー」の「平成28年度防衛省行政事業レビュー外部有識者会合」資料では、この防衛省の公式見解が以下のように後退している。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください