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自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編

Japan In-depth / 2016年11月17日 11時0分

「陸上自衛隊と米陸軍の個人携行救急品については、同等な部分はあるが、品目及び数量ともに少ない状況である」

このように防衛省は陸自キットの不十分さを認めている。また表の中で各アイテムについても、一部機能あるいは数量的に不足と認めている。だがそうであれば防衛省はそれまでの公式見解が誤っていたと認めるべきだが、それは行っておらず、こっそりと軌道修正をしている。納税者に対して不誠実だ。

しかも上記の資料の中で誤った記述も多い。とてもプロが書いたものとは思えない。恐らく衛生の知識の無い担当者が、ウィキペディアなどのネット上の信用性が低い資料を参照して書いたものと思われる。筆者もかつてその被害にあった。拙著の正誤表を陸幕装備部が作成したが、正しいとするほうが圧倒的に間違っていた。この正誤表の公表を小野寺防衛大臣に要求したが内部資料を理由に拒否された。関係者が処罰されたとも聞いていない。恐らく今も同じことが繰り返されているだろう。何しろHP上に上記のようないい加減な書類を平然と掲載しているのだ。防衛省の資料の信憑性は疑って見るべきである。

かつて筆者は、岩田幕僚長の前任者である君塚栄治陸幕長時代に陸幕長会見において、なぜ「個人携行救急品」に国内用と国外用があるのか、国内用は不十分ではないかと質問した。それに対する陸幕広報室の回答は、

「(国内用は)国内における隊員負傷後、野戦病院などに後送されるまでに必要な応急処置を、医学的知識がなく、判断力や体力が低下した負傷者みずからが実施することを踏まえ、救命上、絶対不可欠なものに限定して選定した」

「国外用は、国内に比し、後送する病院や医療レベルも不十分である可能性が高いため、各種負傷に際し、みずからが処置できるための品目を、国内入れ組に追加して選定した」であった。

つまり国内用は国外用ほど充実した内容でなくて構わない、という説明だった。当時は有事やPKO用にアイテムを追加するという説明はなかった。だがその後、中谷大臣、岩田陸幕長時代には国内用「個人携行救急品」には有事に際して止血ガーゼ、ハサミ、手袋、人工呼吸シート、チェストシール各一個を補充し、PKO用と同等にするとしている。

防衛省、陸幕は、以前は国内は病院が多いので、充実したキットは必要ないと主張していたのに、その後有事には全員分ではないにしても、直接交戦する部隊にはPKO用と同じ内容にする、そのための調達計画があり、訓練も行っていると主張は変化しているのだ。これは大きな変化であるが、これに対する説明はまったくない。

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