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自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編

Japan In-depth / 2016年11月17日 11時0分

繰り返えすが現状のまま「駆けつけ警護」が行われれば、出さなくともよい人的損害を出す可能性が極めて高い。それは現場の部隊の責任ではなく、実戦のできない自衛隊の現状を正しく把握せず、部隊を送り出すことを是とした政府が取るべきだ。

安倍首相は、自衛官は危険な任務を承知しているから危険な任務を命じてもよいのだ、と国会答弁で述べている。確かに自衛官は「危機においては我が身を顧みず」と宣誓をしているが、それは政府が自衛隊員を使い捨てにして、犬死にさせていいという意味ではない。部隊を派遣するならば相応の体制を作って、装備を調達し、訓練も行って送り出すべきだ。

安倍政権は安保法制改定にあたっては、自衛隊の現状を把握して、何ができ、何ができない把握すべきだった。ところが法令の文言だけを弄び、それをやらなかった。

安保法の改正に併せて、衛生体制改革のため、医師法などの法改正も必要だったが、それも行なわなかった。防衛省では有事の際の戦傷医療体制の改革に乗り出し、有事の際に最前線で負傷した自衛隊員の救命率を向上させるため、医師免許がない隊員にも一部の医療行為を可能にすると発表した。これは専門家からは戦傷医療の実態を無視している単なる官僚作文であると酷評されている。

しかも准看護師であり救急救命士の資格も持つ隊員が身体に侵襲を与える外科的処理を行うのに、法改正は行わず解釈のみで可能とするらしい。しかも、この有事緊急救命処置の訓練開始は平成29年度からであり、第11次隊、第12次隊には間に合わない。そもそもこの改革は国内向けであり、PKOは対象とされていない。つまり政府も防衛省も極めて幼稚なレベルの戦傷医療体制で、隊員を危険な任務に送り出しているのだ。つまり、PKO部隊は犬死に覚悟で送りだされることになる。

医師法の改正を行わなかったのは、圧力団体である医師会と衝突するからだろう。これだけ議会で圧倒的な議席を持ちながら、この程度の改革すらできなくて、憲法改正などできるのだろうか。他人事ながら心配になる。その程度の覚悟で、隊員を死地に送り出していいものか。

(このシリーズ了。その1、その2、その3、その4。全5回)

トップ画像:ヨルダン軍特殊部隊のチェストリグ。©清谷信一

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