自衛隊に駆けつけ警護できる戦闘能力はない その5戦傷救護編
Japan In-depth / 2016年11月17日 11時0分
先述の行政レビューの資料は「個人携行救急品を全隊員分確保した場合、約13億円が必要となるが、限られた予算においては現実的な金額ではない。よって、即応隊員分等の最低限必要となる分を確保し、有事等の際において追加で必要となる隊員分の取得方法について検討を実施している」としている。
筆者の知る限り世界の軍隊で、このような形で国内用と国外用のキットを分けている奇異な軍隊は存在しない。国内用は形だけでいいというのであれば、ゲリラ・コマンドウ事態も、島嶼防衛事態も発生するとは思っていないということであり、そうであれば陸自の存在自体が疑われて然るべきである。これらの事態すら起こる可能性がないというのに、連隊、師団規模の敵の上陸に備えて多額の費用をかけて10式戦車や機動戦闘車を整備するのは正気の沙汰ではない税金の無駄使いであるとすら言えよう。だから自衛隊は戦争ごっこしかできないと筆者は申し上げているのだ。
つまり国内用はカネがもったいないから備蓄したくない、有事に必要とされる追加分は業者の流通在庫を当てにするという「計画」であるという。これは中谷大臣も同様の発言をしており、防衛省の公式見解だろう。だが、これは明確な虚偽、率直に申し上げれば「嘘」である。存在しない計画があたかも存在すると主張しているのだ。
筆者が業者に取材した限りそのような「計画」を知っている業者はいなかった。そもそもこれらのアイテムは概ね輸入品であり、しかも使用期限がある。自衛隊以外の大口需要は期待できない。それに調達は競争入札であり、必ず勝てるとは限らない。通常は応札が決まってから海外メーカーにオーダーをかける。このため普段から大量の在庫を抱えることはない。
業者に何の保証も行わず、在庫を抱けと強要するのであれば「軍の横暴」であり、お国のために自腹を切って損をしろということになる。これは業者いじめだけではなく、行政による不法行為である。防衛省は民間にこのような不法行為を強要しているだろうか。であれば担当者は懲戒解雇されるべきだ。
そもそも有事になった際に、仮に在庫があっても右から左に納品できない。業者は自衛隊の補給処ではない。電話一本で業者の倉庫から部隊に配送できるシステムは存在しない。まず入札の告知を出してから一定期間をおいて応札者を募って競争入札を行う必要があるが、それで有事に間に合うはずがない。有事に備えるのであれば普段から相当分を調達し、駐屯地に保管しておくしかない。こんな計画はありえない。防衛省は有りもしない計画が存在すると主張しているのだ。
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