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英国単純小選挙区制が変わらぬ理由 世界の選挙事情 その2

Japan In-depth / 2016年12月14日 13時30分

英国単純小選挙区制が変わらぬ理由 世界の選挙事情 その2

林信吾(作家・ジャーナリスト)

「林信吾の西方見聞録」

 

わが国で小選挙区制が導入されたのは、1996年のことであるが、これはもともと、英国の選挙制度を手本にしたものであったことは、よく知られている。

これもよく知られる通り、英国議会は長い伝統を保っているのだが、当初、爵位をもつ者はハウス・オブ・ローズ(貴族院)、持たざるものはハウス・オブ・コモン(庶民院もしくは衆議院と訳される)に議席をもつこととなった。

現在は上院・下院という訳語が定着しているが、正式名称は今もこの通りである。爵位をもつ世襲の貴族は、満21歳になると自動的に上院の議席が与えられるが、反面、下院の選挙権および被選挙権がない。そのまた一方では、政界に限らず、様々な活動で名声を得た人には、ナイト爵位というものが与えられ、上院議員たる資格を得られる。

細かいことを語り出すときりがなくなるが、ここではとりあえず、英国議会は最初から二院制であったことを覚えておいていただきたい。

当初はまた、投票権も一定の身分と資産を有する者、具体的には貴族か、ジェントリーと呼ばれる地主階級(ジェントルマンの語源でもある)にほぼ限られていた。有権者は総人口のおよそ3%に過ぎなかったと言われる。

しかしその後、大衆に政治参加の道を開くべく「一人一票」を求める運動が盛り上がり、1884年に、有権者3万7500人に対して一議席を割り振る「戸主選挙制」が導入された。この名称からも推察される通り、この時点でも有権者は扶養家族のいる成人男子に限られていた。英国でも女性に参政権が認められたのは、第一次世界大戦後のことである。

つまり、二院制だけでなく小選挙区制も、英国においては当初からのものであった。この制度は現在も基本的に引き継がれているので、英国下院の議席数は650に達している。わが国の衆議院は定数415で、およそ3分の2ほどだが、英国の総人口がわが国の半分くらいであることを考えると、実はかなりの差がある。

このため英国でも、議員定数削減を求める声がないわけではないが、さほど大きな動きにはなっていない。伝統という要素もあるが、実際に私が労働党の議員に意見を求めた際に返ってきた答えは、「(現行の制度に)問題がないわけではないのでしょうが、議員と有権者が密接な関係を保てる、という意味では、小選挙区制の利点も、もっと強調されてよいと思います」ということであった。

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