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【大予測:医療】医師・看護師のアジア交流加速

Japan In-depth / 2016年12月29日 18時0分

このことは、厚労官僚も自覚している。「AERA」の2016年10月3日号で、筆者は厚労官僚と対談したが、その中で厚労官僚は「最短5年で医療制度は破綻する」と明言した。ところが、このことが国会で議論されたり、マスコミを通じて、国民に伝えられることはない。我々は、日本社会が崩壊しようとしているのに、暢気にぬるま湯に浸かったままだ。一部の問題が露見すれば、「厚労省は何をやっていたのだ」と政府を批判する。「お上任せ」を止めて、自分の頭で考える時期だが、問題意識をもち、行動に移す人は少ない。現在、必要なことは、中医協のような場所で、机上の空論を弄ぶことでない。現場での行動だ。

いつの時代でも変化を起こすのは若者だ。メディアは報じないが、我が国でも、その萌芽が生まれつつある。そのような若者の一例をご紹介しよう。最近、「チャンスがあれば、シンガポールかインドネシアで働きたいです。話があれば紹介してください」と、教え子の20代の医師夫妻から言われた。二人は名門進学校から東大医学部へと進み、現在は福島県浜通りの病院で働いている。彼らは、診療経験を積むと共に、仮設住宅、復興住宅の住民のケアから、上海やネパールなどとの国際共同研究に従事してきた。夫妻で既に20報以上の英文論文を発表している。なぜ、彼らはアジアに移住することを希望したのだろうか。

それは、アジアは、経済成長とともに医療ニーズが高まることに加え、子どもの教育を考えたからだ。

読者の多くは、現在も日本がアジアの教育をリードしているとお考えだろう。ところが、それはもはや昔話だ。彼らの母校である東大は、もはやアジアのトップではない。イギリスの教育専門誌「Times Higher Education」の2016-17年の世界大学ランキングで東大は34位。東大より上位に、シンガポール国立大(12位)、南洋理工大(シンガポール)(13位)、清華大(24位)、香港大(27位)が入っている。注目すべきは、英語で教育を受けることができるシンガポールの大学の評価が高いことだ。英国の植民地だったという歴史的な経緯もあり、世界中から優秀な若者が集う。シンガポールでは、大学のレベル向上に引きずられ、高校のレベルも急上昇中だ。卒業生は、国内の名門大学だけでなく、ケンブリッジ大学、ハーバード大学など世界中の一流大学に進学する。

私の高校・大学の先輩で、弁護士資格を持つ方は、お嬢さんをシンガポールの高校に入学させた。彼女は、英国の医学部を目指している。「グローバル化する世界に対応する子どもを育てたい」と考えれば、教え子の若き医師夫婦の判断は合理的だ。

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