【大予測:医療】医師・看護師のアジア交流加速
Japan In-depth / 2016年12月29日 18時0分
多くのアジアの都市は、東京からの所要時間は3-6時間だ。航空業界の発展とともに、益々、その距離は近くなるだろう。日本とアジアを往復する「非常勤勤務」も可能だ。これからの医療、特に医師育成を考える際に、日本だけで閉じた議論は意味がない。アジアで、どのようなネットワークを構築し、どう連携していくかを考えねばならない。
現在、政府は医療ツーリズムと称して、アジアからの富裕層の患者の受け入れに熱心だが、医師・看護師などの専門職の交流は加速するだろう。今回、ご紹介した医師夫妻など、そのような枠組みの中で捉えればいい。
逆の流れもある。私の周囲には、福島の病院で働きたいという中国や東南アジアの医師・看護師は珍しくない。受け入れたいと希望する病院経営者もいる。彼らを受け入れるのは、「研修」目的ではなく、「即戦力」だからだ。政府が規制を緩和するだけで、地方都市の医師・看護師不足が改善される可能性が高い。
我々の研究室では、毎週のようにスカイプを用いて、東南アジアの医師・看護師と議論している。その成果は、前述したように論文として発表している。ITC技術を使えば、すでに国境などなくなっている。やがて、アジア全体での遠隔診療が議論されることになるだろう。試行錯誤を繰り返すうちに、「国民皆保険」は「アジア皆保険」に発展するかもしれない。その際、重要なことは、関係者がノウハウを蓄積するとともに、情報公開を進め、社会で共有することだ。私も、自らが編集長と務めるメルマガ「MRIC」で、このような問題を重点的に取り上げたいと思う。
声高に医療崩壊を唱え、政府の責任を追及するだけでは何も変わらない。まず、自らができることをすべきだ。本年は、その第一歩を踏み出したい。
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