【大予測:外国人労働者】受け入れに向け環境整備進む
Japan In-depth / 2017年1月3日 23時0分
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久峨喜美子(英国オックスフォード大学 政治国際関係学科博士課程在籍)
フェズに滞在しながら、砂漠で一夜を過ごし、カラフルなランタンを眺めつつ名物のミントティーを堪能する。ここはゆったりと時間が過ぎ、アメリカやヨーロッパがすぐそこで直面している様々なクライシスが嘘のようだ。
モロッコ王国は立憲君主制をとりながら、様々な構造改革を経てここ数年基本的人権の保障を確かなものにしつつある。例えば 国教であるイスラム教以外の宗教を信仰することも可能だ。政治的決定権や首相任命権などが基本的には国王に委ねられていることから立憲君主制とされているが、実質的に議会に権限があるヨーロッパの立憲君主制とは異なる。確かに表現の自由などに制限があるものの、2000年代半ば頃からの改革を経て、限りなく自由民主主義に近いモナキーとなりつつある。
さて、この美しいモロッコと安定を手に入れつつあるその政治情勢はさておき、今年の出来事に思いを馳せる。言うまでもなく2016年は政治的悲劇の多い一年だった。押し寄せる難民の波、初夏のBrexitの悲劇、そして11月にはアメリカ大統領選でのトランプ選出。こうした数々の悲劇と欧米が築き上げてきた価値観の崩壊を背景に、「ネオリベラリズム」の破綻を論じる学者も多い。
しかし本当にそうだろうか?これは特にメディアに責任があると思われるが、例えば今回のアメリカ大統領選のケースでは、トランプの卑劣な言動を「ポピュリスト」や「ファシスト」などの強烈な言葉を使うことで 、さもこれまでとは全く違う候補者が現れ、ドラマチックな「クライシス」を起こしているように仕立て上げた。
辞書を引いてみれば一目瞭然かとも思うが、トランプはポピュリストでもなければファシストでもない。彼が卑劣で下品な表現を使う人間であり、大統領にふさわしいとは思えない人物だといういささか感情的な意見には賛成だが、強烈に下品な振る舞いをしているだけで、とりわけ彼の推進する経済政策の方向性自体、それほどこれまでのネオリベラリズムに基づいた路線と変わらないのではないか 。
歴史を振り返ってみれば、歴代民主党大統領時代、脱規制を図ることで労働者と労働組合の力を弱め、製造部門を衰退させ、 ネオリベラリズムに基づく経済政策を深めてきた。特に1976年カーターが民主党から大統領として選出されて以降、ブルーカラーとホワイトカラーの格差が広がり 、その後のクリントン、オバマ民主党政権では その遺産として公民権保護がワーキングクラスの支持を得るための争点となった。
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