防衛省に「文民統制」はない
Japan In-depth / 2017年3月19日 11時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・南スーダンPKO陸自の日報、廃棄されたはずが保管されていた。
・背景に自衛隊の隠ぺい体質。
・当局となれ合うメディアに責任あり。
■見つかった陸自の日報、「戦闘」の記述
我が国に文民統制は存在しない。防衛省や自衛隊は納税者、その代表である国会を騙して問題と思っていない。これは民主国家の「軍隊」としてはあり得ないことだ。
南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣された陸上自衛隊部隊の日報が、廃棄したとしていた陸自内に保管されていた。日報には「戦闘」があったと記されていた。「戦闘」があるとPKO派遣の原則が崩れるので、防衛省と自衛隊は組織ぐるみで保存されていた書類の隠蔽を図った。
日報の保管の事実は陸上自衛隊のトップである岡部俊哉陸上幕僚長、さらに3自衛隊制服組のトップである河野克俊統合幕僚長に報告されたが、PKOを統括する統合幕僚監部の内局職員が、これを伏せるよう指示していた。その後、先月になって陸上自衛隊の上層部から担当部署に対し、日報の電子データを消去するよう指示が出された。
つまりは、防衛省内局、自衛隊は組織的に書類を抹殺し、また国会に対して書類は既に破棄されていると報告した。これは「軍隊」と「官僚」が納税者と、その代表である国会議員を騙したことになる。到底文民統制が敷かれている民主国家ではあり得ない話である。
仮に内局官僚からそのような指示があっても、唯々諾々と従うのではなく、防衛大臣に報告する、あるいは国会を騙すことは文民統制上問題がありますと抗議するのが幕僚長はじめ「軍人」の仕事である。
それをしなかったのは組織防衛のためには国民を騙してもかまわないと思っていたからだろう。河野克俊統合幕僚長、岡部俊哉陸上幕僚長は将官の器ではない。だが両幕僚長だけでなく、情報隠蔽という体質は防衛省、自衛隊という組織に染みついた宿痾であるといってもよい。
本来このような日報は今後のPKO活動おいても参考にすべき部内の大切な一次資料である。安易に破棄してよい書類ではない。それを破棄したと、国会を騙したのは自分たちがまともな文書管理を普段からやっていないから、違和感がなかったからだろう。
そしてどの資料が重要で、重要でないとの判別がつかないからだ。過去のPKOの書類は全部廃棄しているのであれば、将来のPKO派遣にまともな検討資料が全く存在しないことになる。他国の軍隊では当然保管すべき書類である。であれば議会で「破棄しました」などという言い訳は思いつかない。この点でも軍隊ではない自衛隊の異常さがうかがえるだろう。
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