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防衛省に「文民統制」はない

Japan In-depth / 2017年3月19日 11時0分

■自衛隊の隠ぺい体質

自衛隊が最も大事にしているのは国家防衛ではなく、組織防衛、自己保身である。このため自分たちに不都合となる可能性がある書類は国防上、必要があっても破棄する、あるいは隠蔽する体質が染みついている。諸外国では普通に公開している情報も自衛隊はひた隠しにする。

例えば用途廃止で破棄された旧式の74式戦車が製造元である三菱重工に払い下げられ、工場の正面に展示されていたが、これに内局官僚が「機密上問題がある」とあげつらったので、同社はこの74式を返納した。この話を外国の軍人や防衛産業の人間にすると一様に信じられない、という顔をする。

対して極めて重要な書類である、これまでのPKOに参加した隊員のカルテは5年を過ぎると全部破棄されている。これは個人情報の保護のためという名目になっているだが、派遣後にPTSDなどになって訴訟を起こされた場合に備えての証拠隠滅のためだろう。諸外国の軍隊では将兵のカルテは原則廃棄されない。例えば英軍にしても第一次世界大戦の頃のカルテも保存している。これは戦傷医療の研究などに必要な一次資料だからである。ただこのカルテも万が一に備えて、こっそりと保存されている可能性も否定はできない。

同様に軍事アナリストである小川和久氏が87年に発刊したその著書「戦艦ミズーリの長い影」で指摘しているが、防衛庁(当時)は兵器開発において不都合な実験や研究結果はサニタイズ、すなわち廃棄して、無かったことにしていると指摘している。このため失敗の教訓が後の開発者に共有されていない。この隠蔽体質が防衛省には未だに根強い。

更に1994年に行われた自衛隊のルワンダ難民救援派遣では現地において、宿営地が銃撃され、医療関係者は30分ほど伏せていたということがあった。ところが後から押っ取り刀でやってきた本部要員は自分だけヘルメットと防弾ベストを身につけており、この件は口外しないようにと口止めした。このためこの件は報告書にも書かれず、当時メディアも知ることがなかった。更に申せば高機動車2両も現地で盗まれているが、これも公にされていない。この話は筆者が当時現場にいた人間から直接聞いた話である。これまた自衛隊の隠蔽体質を示す格好の例であろう。

■情報開示姿勢にも問題

筆者は2010年に「防衛破綻」(中公新書)という防衛省の装備調達の問題を指摘した本を書いたが、これに対して陸幕装備部は部内資料としてその正誤表を作成した(記事末参照)。筆者はその内容の一部を入手したのだが、同文書によると51カ所もの誤りがあるという。だが入手した部分をみても「正誤表」の誤りを正した「正」の方が誤っている、または使っている軍事用語が自衛隊用語ではないと理由で誤りとしていた。

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