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災害派遣に不向き「AAV7」

Japan In-depth / 2017年7月28日 9時42分

ところがこのような揚陸艇を海自は殆ど持っていない。昭和62年、平成元年に進水した輸送艇1号、2号(基準排水量420トン)の2隻があるだけだ。揚陸の主力はおおすみ級輸送艦に搭載されているエアクッション艇であるLCACが6隻だけだ。LCACは調達・維持費が高い割には使い勝手が悪い装備だ。揚陸できるのは砂浜だけ、しかも後進ができないので、方向転換するためにはかなり広い砂浜が必要であり、揚陸地点が限定される。揚陸作戦も勿論だが、このようなビーチングが可能な揚陸艇は災害派遣に極めて有用だ。海自のようにほぼLCACしか持っていない海軍は世界に存在しない。


AAV7は上陸後そのまま活動できる利点はあるが、戦車が搭載できるLSTほど搭載量が多くはない。しかも戦闘重量26.5トン、全長8.16メートル、全幅3.27メートル、全高3.3メートルと図体が大きいので、狭い国内では使い勝手が悪い。また履帯の幅は53センチであり、エンジン出力を車体重量で割ったパワー・ウエイトレシオは、15.83hp/t、接地圧は59kg/m、登坂力は60パーセントで路外走行能力が低い。しかも図体が大きいで起伏が多い場所では車体底部がつかえて立ち往生しやすい。



画像②:バイキング自走迫撃砲型 ©清谷信一


対して英海兵隊のバイキングはどうだろうか。バイキングは戦闘重量11.3トンで全長7.6メートル、全幅2.2メートル、全高2.2メートルだ。水上航行速度は時速5キロとAAV7に比べて低いが、LCACやLSTなどで海岸近くまで運べば問題ない。履帯幅は620ミリで、パワー・ウエイト・レシオ24.33hp/tとAAV7の1.5倍以上で登坂力は100パーセントと、不整地踏破能力が極めて高いので珊瑚礁も難なく踏破できる。


またC-130は勿論、チヌークによって空輸も可能であり戦略輸送性に優れている。AAV7に比べて車体もコンパクトで、そもそも不整地踏破能力は極めて高いので、島嶼防衛作戦は勿論、災害地への戦略機動能力、自力での移動能力も極めて高いものがある。


BAEシステムズの動画


http://www.baesystems.com/en/product/bvs10


AAV7は戦略移動の面でも被災地救援には向かない。これを被災の現場まで持って行くには母船に搭載して、砂浜があるところに自力で陸(おか)にあがるか、LCACに乗せて揚陸する必要がある。


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