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災害派遣に不向き「AAV7」

Japan In-depth / 2017年7月28日 9時42分

そんな可能性が低いシナリオよりもより起こりうる、本来の島嶼防衛に身を入れるべきだった。そうであればAAV7という時代遅れで役立たずの装備を買う必要は無かった。


そのAAV7の採用は政治決断だったようだ。防衛省は本来AAV7の採用に関しては、APC(装甲兵員輸送車)型のみならず、指揮通信車と回収車と併せて3年度掛けて試験運用し、採否を決定するはずだった。試験用として初めにAPC型4輌が調達され、翌年度に発注された指揮通信車と回収車が発注された。だが指揮通信車と回収車の到着を待たず、僅か半年に試験を端折って、AAV7の採用を決定した。


先に述べたように南西諸島での珊瑚礁に囲まれた離島への揚陸や、擱座したときに回収車を使用して回収するなどもまったく調査も試験もしていない。にも関わらず採用が決定されたのだ。


これが、日中関係が険悪化し、直ぐにでも不測の事態が起こりうるというならば話は別だが、政府、防衛省にはそのような認識はなかった(これは当時の小野寺大臣も岩田陸幕長も認めている)にもかかわらず、本来やるべき試験を怠って、「アメリカに言われたから」(当時の岩田陸幕長)と、無理矢理試験を縮めて導入した。まるで昔の総督がいた時代のフィリピン軍のようである。とても独立国の「軍隊」、政府とは言えない。


しかも発注され、一度も使用されなかった試験用の指揮通信車と回収車は部隊に配備される52輌のAAV7に組み入れられない。この試験の短縮は、指揮通信車と回収車の発注前に分かっていた。ところが防衛省は試験用に調達するはずの装備が、試験に使用されないのが分かっていて発注・調達したのだ。これは税金の無駄使いであるが、何故か国会も会計検査院も問題にしていない。これらのことから、AAV7の導入は政治主導、恐らくは最近はやりの「首相官邸の最高レベル」の意思が働いたのだろう。


上陸作戦は当然ながら揚陸後に内陸で戦闘を行う。だが陸自が編成を進めている水陸機動旅団(仮称)には現状陸上で使用する装甲車はない。そうであれば陸上では愚鈍なAAV7で戦闘を行うことになる。しかもAAV7は1個小隊が搭乗するので、撃破されたときの人的被害は大きい。つまりは内陸での戦闘では大きな被害を出すことになるだろう。



画像③:アルゴ社の汎地形車輌の軍用型 ©清谷信一


主力装甲車がAAV7だけでは上陸作戦任務はこなせない。だから米海兵隊はAAV7と通常型の装輪装甲車で水陸両用機能のあるLAV25を併用し、その後MRAP(耐地雷装甲車)を採用している。英海兵隊はバイキングを選択している。その他多くの国の海兵隊や水陸両用部隊では揚陸艇とピラーニャなどの水陸両用機能のある通常型の装甲車を組み併せて使用している。


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