災害派遣に不向き「AAV7」
Japan In-depth / 2017年7月28日 9時42分
陸路ならばかなり大きなトレーラーに搭載する必要がある。C-130輸送機は勿論、C-2輸送機でも輸送は無理だろう。ましてヘリで空輸することもできない。つまり被災地にたどり着くまでが困難である。
そして、ご案内のようにリーフを超えることができない程度の不整地機動力しかないので、倒木などを超えるのは困難であり、完全に洪水で水没した処ぐらいしか役にたたず、泥濘地や増水で沼沢化したような地域、豪雪地帯では役に立たない。
AAV7は水陸両用装甲車ではあるが、艀を装甲車化したような存在で、海岸堡を確保するためのモノである。つまり、通常の装甲車輌としての能力は低い。比べて主として海岸と母船を往復して兵員を揚陸させるための装備であり、内陸での機動戦闘は本来想定していない。
実はAAV7は本来の任務である島嶼防衛の主たる対象地域である南西諸島の珊瑚礁や防潮堤も越えられない。政府のいう島嶼防衛とは尖閣諸島など無人島、小島などを指していたはずだ。ところがAAV7はそのような南西諸島の離島では運用ができず、沖縄本島とか、宮古島とか大規模なビーチが存在する島でないと運用できない。
そもそも運用が想定される南西諸島の離島での運用が可能かどうかの実験すらやっていない。防衛省は瀬戸内海でおおすみ級輸送船からAAV7を水上に発進させる程度のおざなりの試験しかしていない。
ということは、政府と防衛省は本来の島嶼防衛は諦めて、宮古島や沖縄本島が人民解放軍に占領されて、それを奪回する作戦=民間人を巻き込む作戦を考えている、ということになる。つまり始めから尖閣諸島などの防衛は放棄し、相手に更に宮古島や沖縄本島を占領させてから、島民を巻き込んでの奪回作戦前提の作戦を考えていることになる。
だが、それならば島嶼防衛で想定していた離島の小競り合いではなく、中国の本格的な日本侵攻となる。現防衛大綱は「大規模着上陸侵攻等の我が国の存立を脅かすような本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」としていることと矛盾する。まるで精神分裂だ。
政府、防衛省は沖縄県民に対して、本来の島嶼防衛は放棄し、先の戦争同様に沖縄県民を巻き込んで沖縄本島など人口が多い場所での作戦を採用すると説明したのか。防衛問題に過剰なくらいセンシティブな沖縄のメディアやリベラル系メディアがこのことを取り上げないのは不思議としか言いようがない。
更に申せば沖縄本島が占領されるということは、米軍の空軍拠点である嘉手納も壊滅して、在日米軍の航空戦力、沖縄や九州における自衛隊の航空戦力も壊滅している状態だが、そのような荒唐無稽なシナリオの起こる可能性は、無人島を対象にした本来の島嶼防衛よりも起こる可能性が高いはずもない。
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