急加速するドイツ車EV戦略
Japan In-depth / 2017年12月21日 11時39分
付加価値とは、利益・人件費・税金・償却費などであり、簡単に言えば、全産業に占める自動車の重要度である。ガソリン車やディーゼル車が3万点の部品で構成されるが、EVはその半分以下であることはよく議論される点である。よって既存の自動車がEVに取って代わられると、部品やその他関連産業の雇用も含め、ドイツでは100万人近い雇用が失われるという試算があるが、大なり小なり、日本でも同様なことが言える。
第2の点は、電力供給の問題である。ドイツは総発電量の約6割が火力発電だが、その大半は石炭による発電である。また現在2割弱ある原子力発電は、2022年までに全廃される。太陽発電で大コケをしたドイツでは、2022年以降、8割以上が火力発電となり、その大半が石炭というジレンマに陥る。
そこにEVが相当数普及すれば、EVを発売するために石炭を燃やすという、大きなパラドクスに直面する。これも、東日本震災以降、有意義な電力政策を持たない日本とよく似ている。
EV拡販と電力政策は表裏一体であって、CO2の排出基準は、“Well-to-Wheel”で判断すべきで“Tank-to-Wheel”だけでは意味を成さないのだが、ドイツも日本も、この点に於いて確たる電力政策を持たないため、何年までにEVを、とは言い出せないのである。
その両国のドイツ勢と日本勢が、EV車の開発にドライブを掛けるのは何故か、それは各国の国策による自動車政策、特に米国と中国の環境政策が、明らかにEV重視だからである。
図)環境・エネルギー制約(車種別販売台数(世界)の将来予測)
出典)2012年経済産業省作成
図)自動車からのCO2排出量 (単位:100万トン)
※2014年の数字
出典)国際エネルギー機関(IEA)
VWにとっての最大の市場は中国である。Audiやメルセデス、BMWやポルシェにとって、最大の収益頭は米国である。その世界で最大の自動車市場である中国と、第2の規模を持つ米国が、共に“国策”としてEVを推し進めているのである。
はっきり言って、ドイツ国内や日本国内の市場規模など、これらの国に比較すれば微少で、今後も頭打ちから減少傾向である。一方の中国と米国は、自動車需要はまだまだ伸びる。各メーカーにとっての優先順位は、圧倒的に中国と米国である。この2カ国で販売できなければ、自動車メーカーとしての将来は無い、とまで言えるのである。
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