「掌返し」はもはや病理ではないか サッカー日本代表のカルテ その3
Japan In-depth / 2018年5月6日 7時0分
林信吾(作家・ジャーナリスト)
林信吾の「西方見聞録」
【まとめ】
・協会はワールドカップに向け、チームを上向かせるカードをもはやハリルは持っていないと判断したのでは。
・任命責任も説明責任も果たさない協会の態度と、一部サポーターの「掌返し」が問題。
・西野新監督は4年先、8年先のワールドカップで優勝候補と呼ばれる日本代表の礎を築くべき。
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ハリルホジッチ(以下、ハリル)前監督の記者会見を見た。
スカパーで生中継され、様々なサイトに録画がアップされたので、ご覧になった方も多いだろう。
かつて、代表監督候補として名前が取り沙汰されながら、いわゆるマスコミ辞令を反故にされた外国人指導者が、協会は「腐ったミカン」だと憤懣をぶちまけたことがある。
今次の会見も、この時と同様かそれ以上に、ハリルが怒りを爆発させるのではないかと予測した向きが多かった。これまでの彼の言動から、十分に考えられたことであったが、しかしその予測は外れた。終始淡々と、とまでは言えないものの、懸命に感情の高ぶりを抑えながら話している様子が伝わって、急に同情論が高まったように思える。
私にとって、会見の内容自体は「まあ、こんなものか」と言ったところで、シリーズ第1回で書かせていただいたことが裏付けられただけであった。それでもなお驚かされたのは、強化委員会の存在と役割について「よく知らなかった」というハリルの発言で、解任理由とされる「コミュニケーション不足」は、監督と選手との間で生じた問題ではなく、最初から監督と協会との間にあったのではないか。
ハリルが本田圭佑、香川真司といったスター選手を積極的に使わないことに、スポンサーが危機感を持った、などという週刊誌報道もあったが、これははっきり言って眉唾ものだ。
スポーツ・ジャーナリストで協会の特任理事でもある中西哲生氏が、4月29日の『サンデー・モーニング』(TBS系)で述べたことを概略紹介すると、「そんな簡単に監督をクビにしたりはしない。(協会は)様々な角度から精査して、ワールドカップ本大会に向けて、チーム状態を上向かせるカードをもはや(ハリルは)持っていない、という結論を下したのだろう」となる。まず間違いなく中西氏の見立て通りだろうと、私も思う。
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