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米朝交渉 非対称な非核化と安全の保証の取引

Japan In-depth / 2018年6月22日 23時39分

 

■ 非対称な非核化と安全の保証の取引

米国政府は北朝鮮のCVIDに基づく非核化と、工程表や非核化の期限の設定を含む、強い決意をもって米朝首脳会談に臨んだはずであった。また北朝鮮も「北朝鮮に対する軍事的脅威が取り除かれ、北朝鮮の体制の安全が保証された場合、北朝鮮は核兵器を保有する理由はない」(鄭義溶韓国国家安全保障室長が北朝鮮訪問した後の南北合意<2018年3月6日>)と立場表明し、朝鮮労働党中央委員会第7期第3総会での決定、「板門店宣言」での「完全な非核化」の確認を通じて、北朝鮮は「戦略的転換」の過程にあり、これを重視すべきだという見方も多くの専門家から提示されていた。それにもかかわらず、米朝合意が曖昧な内容にとどまった理由は何であろうか。

▲写真 鄭義溶韓国国家安全保障室長と金正恩委員長(2018年3月5日)出典:Blue House (Republic of Korea)

米政府で北朝鮮との実務交渉に携わった関係者は「首脳会談での合意はあくまでも大枠を示し、今後の継続的交渉において可能な限り具体的合意の柔軟性を残すことに意味があった」と述べている。

また同関係者は、(実務交渉の時間が限られていたことは事実だが)これまでの実務協議を通じて、相当踏み込んだ具体的な非核化の措置を議論し、それに対応する安全の保証のあり方を提示したことを示唆した。首脳間の合意文書の背景には、非核化をめぐる具体的な工程表や時期などが具体的に議論され、共同声明に基づきこれを継続交渉することを位置付けたことこそに、意義があるということである。

実際、米朝首脳会談後にポンペオ国務長官と会談した河野太郎外務大臣は出演した報道番組で「米国はミサイルや生物・化学兵器など47項目を(共同声明に記載された)『非核化』という言葉で表している」という認識を示している。

▲写真 ポンペオ国務長官と河野太郎外務大臣(日米外相会談2018年6月14日)出典:河野太郎Twitter

米朝首脳会談は政治的な見世物であり、トランプ大統領は非核化の具体的合意を目指さず、北朝鮮に対して一方的に妥協した、という見方は必ずしも交渉の全体像を捉えるものではない。米国は短期間で非核化の具体的な段階を提示し、これを早期に北朝鮮と合意することを目指していた。北朝鮮も6月の首脳会談で非核化実現への「行程を示す用意がある」(4月下旬にポンペオ長官が訪朝した際に金正恩委員長が述べたとされる)という姿勢を示したとされる。

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