米朝交渉 非対称な非核化と安全の保証の取引
Japan In-depth / 2018年6月22日 23時39分
しかし、実際には米朝首脳会談の段階で詰め切ることはできず、これを米朝ハイレベル協議で「完全かつ速やかに履行」することを確認したということになる。
北朝鮮が一部の専門家がいうように本当に「戦略的転換」を果たし、非核化の本格的プロセスを開始し、安全の保証の獲得と経済建設を目指す方針なのか、それとも北朝鮮が核兵器を放棄する可能性は一切考えられず、米朝・中朝・南北の枠組みを通じて一時的に緊張を緩和し、最終的に核兵器国として抑止力を確立する方針なのか、現段階で断定的に論じることはできない。
また仮に米朝ハイレベル交渉が実質的進展したとしても、CVIDに基づく厳格な非核化となるのか、より不完全で可逆的な内容となるのかも、予断を許さない。さらにミサイルや通常戦力等を含む包括的内容となるのか、米国の優先事項となる核兵器と大陸間弾道弾(ICBM)を重視した交渉となるのか、これも不確定な要素が多い。
おそらくこの時点で言えることは、北朝鮮が「戦略的転換」を果たしたとすれば、その転換を交渉を通じて十分に支援し、北朝鮮にとって有益で不可逆的なプロセスとして確立することが重要である。
しかし仮に北朝鮮が現段階でも核兵器を手放す意図がないのであれば、早期にその意図を交渉のなかで見極めて確定判断し、米国および関係国のより厳しい「最大限の圧力」へと回帰することが肝要であろう。もっとも避けるべきは、曖昧な合意のもとで交渉を継続させ「事実上の核保有」を既成事実化することである。
歴史的な米朝首脳会談と共同声明の真価を決めるのは、今後の米朝ハイレベル交渉にかかっている。この交渉での基本的構図は、北朝鮮の非核化の具体化と、米国の安全の保証の提供の均衡を、米朝双方が見いだせるかである。
そして米朝交渉の過去25年間の経緯と同様に、「非核化」と「安全の保証」は均衡させるのが難しい非対称な取引である。そして北朝鮮の核・ミサイル開発が相当進捗した状況において、過去に提示された「安全の保証」を改めて示すだけで、この均衡が成立するとはおよそ考え難い。
一般的に「安全の保証」には
①北朝鮮を攻撃する意図の否定(不可侵の意思表明)(eg.「第4回6カ国協議共同声明」など)
②北朝鮮を攻撃する能力の制限(米韓演習の規模縮小・中止・在韓米軍の態勢変更等)
③これら措置の制度化(朝鮮戦争終結、平和協定の締結、関係正常化)
などが考えられてきた。
さらに先述のとおりポンペオ国務長官は「過去とは異なる独自の安全の保証を準備している」と述べている。ポンペオ長官はたびたび「北朝鮮が非核化すれば、北朝鮮に対する外国からの投資機会が拡大する」と示唆していることから、ユニークな安全の保証とは北朝鮮に対する経済インセンティブである可能性が高い。
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