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米朝交渉 非対称な非核化と安全の保証の取引

Japan In-depth / 2018年6月22日 23時39分

他方で、最大の焦点であった非核化は「完全な非核化」という表現にとどまり「検証可能で不可逆的」を含むCVIDが言及されず、非核化の定義、工程表、スケジュールや実施期限についても全く示されなかった。

また北朝鮮の非核化に対するコミットメントについても、これまでの北朝鮮の国内的決定や南北合意等で示された内容を踏み越える意思が示されたとは言えない。さらに「包括的」と謳っていながら、ミサイル、通常戦力や人権問題についての言及もなかった。かつての「米朝枠組み合意」(1994年10月)や「6カ国協議共同声明」(2005年9月)が具体的措置に踏み込んでいたことを鑑みれば、今回の共同声明の具体性のなさは際立っている。

北朝鮮が米朝首脳会談で戦略的決断を下し、高度で具体的な非核化の措置を引き出すという期待は、少なくとも首脳会談の共同声明では実現しなかった。そればかりか北朝鮮の朝鮮中央通信は「米朝両首脳が、朝鮮半島の非核化を進める過程で『段階別・同時行動』の原則を順守する重要性を共有した」と伝え、米国側が目指していたとされる包括・一括妥結・短期履行方式を事実上否定している。

北朝鮮は米国が強く要求した「包括的で具体的工程に基づくCVID」を回避し、「段階的・同時的」措置という原則を獲得し、米朝合同軍事演習を中止を約束させ、北朝鮮に対する安全の保証の原則を取り付けた。

そしてこのことは、米朝交渉の前に2度も北朝鮮との首脳会談を実施した中国の立場からすれば、従来から主張していた北朝鮮の核・ミサイル実験と米朝演習を同時に中止する「二重凍結」(dual suspension/freeze-to-freeze)路線が事実上実現したことになる。

そして重要なのは時間である。共同声明では「可能な限り早期にマイク・ポンペオ国務長官と北朝鮮のハイレベル高官が主導する継続交渉の開催にコミットする」と記述されている。しかし、今後の米朝ハイレベル対話で非核化に関する具体的な措置やスケジュールが詰まらなければ、北朝鮮の「事実上の核保有」という状況の打開は叶わず、交渉継続中の米韓演習の中止を含む安全の保証の提供は得られることになる。つまり「二重凍結」こそが、あらたな現状維持として固定化される可能性を帯びているのである。

▲写真 ポンペイオ米国務長官と北朝鮮金正恩委員長 2018年3月31日 出典:Twitter : White House

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