小火器の国内生産は必要か
Japan In-depth / 2018年7月26日 18時0分
清谷信一(軍事ジャーナリスト)
【まとめ】
・小火器国内生産は不要。高額、調達長期化で自衛隊戦力弱体化。
・国産小火器が能力的にも産業的にも発展する可能性、殆ど無し。
・国内メーカー再編統合できぬなら、小火器は輸入に切り替えを。
【注:この記事には複数の写真が含まれています。サイトによっては写真説明と出典のみ記されていることがあります。その場合はJapan In-depthのサイトhttps://japan-indepth.jp/?p=41216でお読み下さい。】
ライフルや拳銃、機関銃といった小火器の国内生産は本当に必要なのだろうか。筆者は自衛隊には不要、あるいは不可能だと考えている。自衛隊にはまともに国内生産基盤を維持する能力と当事者意識が無いからだ。
例えば小銃を見てみよう。カナダ軍は80年代に米軍の採用したM-16ライフルに改良を加えてC7として国産化した。カナダ軍の兵力は当時僅か数万人に過ぎなかったが、C7の調達単価は米国製M-16A2と大差ない5万円、歩兵用の光学サイト搭載型でも11万円に過ぎず、しかも僅か数年で調達を完了している。そしてその後改良型も開発、調達されている。
▲写真 C7A1を構えるカナダ陸軍兵士 出典 LCPL RL KUGLER JR
対して豊和工業が開発、生産している我が国の89式小銃はどうだろうか。当初32万円の調達コストは世界一高い軍用ライフルと話題になったが、その後量産で28万円程度になったものの、来年度要求単価は39万円と極めて高くなっている。M16の7~8倍だ。しかもレイルマウント搭載などの近代化もなされていない。兵力が数分の一に過ぎないカナダ軍がライセンス料を払って自国で生産したのに、ライセンス料を払う必要もないのに何故我が国でできないのだろうか。
▲写真 89式小銃空挺型 ©清谷信一
問題なのは調達価格だけではなく調達期間の長期化だ。89式は1989年に採用されて以来、30年近く経っても64式小銃の更新が終わっていない。このため小銃の訓練、兵站が二重であり、その分経費も余分に掛かっている。これはまた有事の際の補給や、部隊再編でも大きな障害となる。カナダ軍よりも遥かに多い兵力を抱えている自衛隊が何故7~8倍も高い単価を払い続け、ライフルを30年近い年月を掛けてもまだ調達を完了できないのか。
しかもその間自衛隊、特にライフルを多く使用する陸自の隊員は大幅に削減されているのだ。調達の現場が有能であるとはとても言えない状態だろう。対して先述のように、カナダは高価な光学照準器を搭載しても短期間で調達を終えている。しかも近年ではレイルマウントを搭載し、光学照準器も更新され、フラッシュライトなどその他のアクセサリーも充実させている。対して89式には何ら改良が加えられていない。
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