小火器の国内生産は必要か
Japan In-depth / 2018年7月26日 18時0分
対して、外国の新興メーカー、例えばUAE(アラブ首長国連邦)のカラカル社はオーストリアなどから「お雇い外人」をスカウトし、最新鋭の生産機材を導入している。このため製品の質は決して低くない。しかもUAEでは同社のピストル、カラカルをサービスピストルとして軍だけではなく、法執行機関でも採用して、生産コストを下げている。また、同社は輸出も行っており、例えばドイツのニュルンベルクで行われているIWAのような民間向けのハンティングや火器の見本市などにも出展して販路を拡大している。
ところが我が国ではこのような真摯な取り組みは行われていないし、やる意思もない。輸出できないから価格が7倍、8倍は当たり前だと開き直っている。だが、それでも拳銃にしても自衛隊、警察、海保で同一のものを採用してコストを下げることは可能だ。また本来軍民の民間市場への販売も可能だ。特に拳銃ならば尚更だ。そのような努力をする発想すらない。このため我が国の小火器が将来的に能力的にも産業としても発展する可能性は殆どない。
これを、国際価格を遥かに超えるコストを掛けて税金で支える必要性は極めて低い。世界に小火器メーカーは溢れており、圧倒的に買い手市場だ。我が国が開発・生産基盤を持たないと海外と交渉できないということはない。有事に備えるのであれば、定数に一定の比率で予備の銃やパーツをストックしておけばよい。またメーカーとの契約に整備工場の確保と稼働率を保証させれば稼働率も保証される。
国内基盤を維持するために諸外国の8倍の値段の小銃を30年近くかかっても更新できず、更新がいつ完了するかわからない国産調達の方が大問題で、メリットよりも弊害の方が遥かに大きい。その間訓練・兵站は二重となり効率が悪い上に修理などの効率も悪く、コストが高くなる。それだけではない。調達の途中で有事が起きたらどうなるのだろうか。
むしろ外国製の小銃を導入した方が遥かによい。例えば89式調達が30年で終わると仮定し、その代わりにM-16を導入したとしよう。同じ調達予算を使うならば4年もあれば調達は完了する。その後2年同じ予算を使って小銃、或いは大量の予備部品を調達して定数の1.5倍が調達でき、戦略予備の備蓄としては十分だろう。それは6年で完了する。後の24年分の予算は丸々浮くことになって、他の予算に振り向けられる。
そして仮に1999年に我が国に対する大規模な侵攻が起こったとしよう。89式は10年かけても、三分の一も調達が完了しておらず、多くの部隊では89式と64式が混ざった状態で戦闘することを強要される。しかも予備の銃は存在せず、豊和工業がラインを増強するにして半年はかかるだろう。つまり数年も戦闘が続くのでない限り、増産は殆どあてにならない。また緒戦では増産は不可能だ。
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