挑み続ける医師、福島からの変革
Japan In-depth / 2018年8月3日 10時43分
上昌広(医療ガバナンス研究所 理事長)
「上昌広と福島県浜通り便り」
【まとめ】
・閉鎖的ムラ社会の医療界で問い続ける尾崎章彦医師。
・熱意ある医師のもとに若手、人材が集まる。
・震災から7年。人材が育ちつつある福島から医療が変わりつつある。
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製薬企業と医師の癒着は根深い。2013年のノバルティスファーマの臨床研究不正事件を経ても、実態は変わらない。この問題を問い続けている医師がいる。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)の乳腺外科医である尾崎章彦医師だ。
彼は2017年、戸井雅和・京都大学教授および大野真司・がん研有明病院副院長を中心とした臨床研究グループJBCRG(Japan Breast Cancer Research Group)が、世界最高峰の医学誌である「New England Journal of Medicine (NEJM)」に寄稿した論文で、製薬企業との利益相反を開示していないことを英文の専門誌に報告した(参考記事)。
この臨床試験は、中外製薬が販売する抗がん剤カペシタビンの有効性を検証しているが、中外製薬が研究資金を負担していたことが明らかとなっている(参考記事)。
ところが、戸井教授らは「開示すべき利益相反はない」と記し、中外製薬との利益相反を開示しなかった。これは医学研究の領域で明確なルール違反だ。
しかも、そのやり方が姑息だった。中外製薬は、2012年から4年間に一般社団法人JBCRGに1億円を寄附している。このことを論文に記さなかった。中外製薬が販売する抗がん剤を、あたかも第三者である医師が評価したという体裁をとった。
このことは少し調べればわかる。関係者から質問を受けた戸井教授は「研究の実施主体は任意団体のJBCRGで、同名の一般社団法人JBCRGから寄附を受け取った」という主旨の説明を繰り返している。かつて政治家が資金集めでよくやったやり方だ。目的は資金洗浄や脱税。刑事事件になったこともある。このような回答を繰り返す戸井教授らへの疑惑は益々深まった。
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