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挑み続ける医師、福島からの変革

Japan In-depth / 2018年8月3日 10時43分

 


 ただ、批判が堪えたのだろう。戸井氏らは、NEJM上のレター欄で利益相反があることを認めた(参考記事)。しかしながら、この際にも全てを明かさなかった。余程、知られては困ることがあったのだろう。尾崎医師は、修正申告の不正を明らかにした。


 


 彼が、この隠蔽に気づいたきっかけは、ワセダクロニクルと私が主宰するNPO法人医療ガバナンス研究所が共同で進めている製薬企業から医師への支払の調査に参画したからだ。この調査では、日本製薬工業協会に所属する製薬企業71社の支払をすべて調べた。そして、製薬企業から医師個人への支払の状況を明らかにした。その結果は衝撃的だった。


 


千葉大学の内科教授など、年間に155回も製薬企業の講演会の講師やコンサルタントなどを務め、その対価として2,000万円を受けとっていた。わかっているだけで、戸井医師は318万円、大野医師は602万円を受け取っていた。とは言え、当該論文に関係しない支払いは必ずしも申告する必要はない。


 


それでは中外製薬からの支払いはどうだったか。日本人著者12人のうち9人が、2016年に中外製薬から支払いを受けていた。そのうち論文発表当初に中外製薬に対しての利益相反を申告していたのは3人だけだった。当初、中外製薬に対しての利益相反を報告していなかった6人のうち中外製薬に対しての利益相反を修正申告したのは3人に過ぎず、残りの3人は申告しないままだった。この中には、大谷彰一郎医師(広島市立広島市民病院)のように中外製薬から245万円の支払いがあった者もいた。これは悪質だ。ところが、この問題を指摘する人はいない。それは医療界が閉鎖的なムラ社会だからだ。


 


 医療界は狭い社会だ。厚労省、日本医師会、大学医局が幅を利かせている。無理が通れば道理が引っ込む。1980年代、彼らは競争相手を減らす為に「将来的に医師は余る」と言い続け、医学部定員を減らした。その結果、現在の医師不足を招いた。ところが、彼らは、いまだに同じ主張を続けている。これは世間から相手にされていない。その証左に東欧の医学部へ進学を希望する高校生が急増している。彼らは「医師へのニーズは益々高まる」と考えている。


 


最近、話題の新専門医制度も、医学界の幹部の主張とは正反対に医師の東京一極集中が加速した(参考)。これを主導したのは、医学部教授だ。多くは筆者の母校である東大医学部の卒業生だ。


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