自滅する国産機関銃 輸入へ切り替え
Japan In-depth / 2018年8月7日 23時51分
だが7.62ミリNATO弾と5.56ミリNATO弾では射程も貫通力も大きく異なる(陸自の5.56ミリ弾はNATO弾と微妙に仕様が異なっている)。7.62ミリNATO弾と5.56ミリNATO弾では威力の差は約2倍ある。例えば厚さが15ミリのアルミ装甲の場合、5.56ミリは200メートル程度の距離までしか貫通できないが、7.62ミリ弾は400メートル程度の距離、つまり約2倍の距離でも貫通が可能だ。またPKO活動では現地の軍隊や武装勢力は7.62×39カラシニコフ弾や7.62×54ミリロシアン弾を使用していることが多く、5.56ミリ機関銃では対抗が難しい。
諸外国では5.56ミリ機関銃の運用を見直す軍隊も出てきている。英陸軍ではMINIMIの廃止を検討している。米陸軍も5.56ミリのM249(MINIMI)をより大きな口径のオートマチックライフルに変えるNGSAR(Next Generation Squad Automatic Rifle)プログラムを進めている。陸自ではMINIMIを更新する計画はないが、陸幕や富士学校でも普通科向けの7.62ミリ機関銃の採用を再検討してきている。
先述のようにMINIMIはヘリ用の機関銃としても威力不足であり、今後陸自においても少なくとも7.62ミリ機関銃の導入が検討される可能性は高いだろう。その場合、MINIMIの更新だけではなく、同軸機関銃を共有化した方が兵站負担も軽くなる。
また既に導入されたM240BやM134との弾薬の共有化も可能となり、当然米軍との弾薬の相互運用性も改善される。そうであれば74式機関銃も輸入の7.62ミリ機関銃に切り替える可能性が高い。
現実問題としてここ数年の調達水準では住友重機の機関銃生産ラインと約50名といわれている雇用の維持は不可能だろう。産業として維持できるレベルの発注数は確保できない。また国家財政も逼迫しており、国際価格の7~8倍以上の機関銃の調達を維持することは財務省も問題視している。
既に海自も高い国産機関銃に難色を示しており、2018年度予算では実現はしなかったが、輸入機関銃の採用を検討した。これらのことから機関銃調達が国産から輸入に切り替わる可能性は少なくない。その場合、全ての機関銃でモデルの変更が行われる可能性も少なくない。有事の際には国内での生産が不可欠だという論もあるが、現在のメーカーの体制では即時の増産は不可能であり、画餅に過ぎない。しかも調達単価が高いこともあり、予備の備蓄が殆どない。むしろ安価な外国製を集中的に調達することによって、相応の戦時備蓄を持つ方が遙かに有事に有用と言えよう。
それから表に示したが、空幕では5年以前の予算の資料を廃棄しており、これは予算執行を検証する時に極めて困難になることを最後に指摘しておきたい。
取材協力:陸上自衛隊幕僚監部広報室
海上自衛隊幕僚監部広報室
航空自衛隊幕僚監部広報室
トップ画像:MINIMI on a LAMV ©清谷信一
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