陸自のAH-Xを分析する その1
Japan In-depth / 2018年11月30日 9時30分
陸自は旧式化したAH-1Sの後継機種としてAH-64Dを選定。2002年から富士重工(スバル)のライセンス生産により開始した。先述のようにAH-64Dは62機調達する予定だったが13機で調達が打ち切られた。陸自は10機調達したところで、急に調達をやめると言い出した。
その理由について陸幕は、米国が64-D 型から64E型に移行して追加発注ができない、部品が無くなるとか、調達価格の予定外の高騰などを理由と説明してきた。この調達価格高騰の原因は独自仕様を盛り込んだことと調達ペースが遅いことが挙げられる。この仕様の変更ではスティンガー対空ミサイルや日本固有無線機の採用、ネットワーク能力のダウングレードなどが盛り込まれた。そしてボーイング社がAH-64の機体の製造中止を決定したことが挙げられる。
だが根源的かつ最大な理由は別にある。防衛省の調達は原則的に諸外国のように調達数、調達期間、予算総額を議会に提案して、了承されて予算化されるわけではない。長年初年度の調達が決定されて以降、毎年度ごとに調達数と予算が決定される。
幕僚監部も政治も装備の調達が、いくつ調達され、いつ終わるか、総額がいくらになるかも知らない。ごく例外的にF-35Aのように調達機数が明示されることもある。AH-64Dの予定調達数も単に幕僚監部の見積もりにしか過ぎない。だが、この調達体制では高度に統合された電子部品とソフトで構成されるアパッチの維持が不可能だった。アパッチのような機体では一部のパーツを替えるだけでも、全体のソフトウエアの見直しが必要だ。陸幕はブロックII・ロット7の仕様に沿った調達を長期に行う予定だったが、この調達方式では、メーカーと長期の契約を結ぶことも、新しいアップデートに対応することも無理だった。そもそも陸自仕様を何十年にも渡って維持することは不可能だった。
その後ボーイング社は韓国空軍がF-15Kを採用するにあたり、オフセットとしてアパッチ胴体の生産ラインを韓国の大韓航空に移管し、AH-64Eの生産に移行したが、既に陸自は調達中止を決定した後だったので調達の再開を行わなかった。自衛隊の少数長期間の調達は外国装備取得の際にこのような、製造中止というリスクを増大させる。それを回避するためには調達期間を短縮し、諸外国のようにいつまでに調達するかという計画を示し、メーカーと合意する必要がある。
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