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陸自のAH-Xを分析する その1

Japan In-depth / 2018年11月30日 9時30分

 


実は陸自航空隊は偵察ヘリやUH-X調達などでも深刻な問題を抱えており、これらがAH-Xにもたらす影響は看過できない。スバルはUHーXをベースの武装ヘリを提案する予定だが、これも先行きが不透明だ。UH-XはUH-1Jの後継として2014年にスバルのB412EPIをベースに開発する案が採用された。約150機の調達が見込まれており、約263億円の開発予算で、2022年に開発が完了する予定だ。UH-Xは民間市場でも汎用ヘリとして販売される予定だ。UH-Xは選定時に調達単価12億円程度という条件が提示されていた。


 


だが業界筋によると調達単価は20億円を超えると予想されている。12億円というのは現用のスバルが生産した単発のUH-1Jと同じ価格である。この価格で同じクラスの双発ヘリを要求すること自体が無理な話だ。実際に昨年行われた北海道の防災ヘリ1機の調達において、ベル社のB412EPIを指名で25億円の予算だったがベル・ジャパンは入札を辞退している。


 


防衛省は装備調達コストの高騰を避けるために、米国の国防授権法(ナン=マッカーディ条項)を見習って、コスト管理のためのルールを平成27年度に大臣訓令としてだしている。これによれば調達単価が当初の150パーセントを超えると調達を見直し、あるいは中止する可能性がある。この見直し基準が米国ほど厳格ではないが、財務省がこの件を盾にとって調達見直しを迫ることは十分に予想される。そうなればUH-Xの武装化型の開発以前にUH-Xの計画自体がキャンセルされる可能性がある。その場合、UH-Xは新たな機種が選定されることになる。しかしながら既にUH-Xの調達は遅延しており、新しいヘリコプターが選択されるにしても新規開発ではなく、既存ヘリの採用となるだろう。


 


だが、来年度の防衛省概算要求ではUH-Xを6機 110億円、初度費52億円を要求している。調達単価は約18.4億円であり、当初目標の12億円の1.53倍である。当然ながら先述の大臣訓令が規定する150パーセント増を超えている。


 


にも拘らず、防衛省は見直すことなく概算要求で予算を計上した。これは装備予算高騰を抑えるための自らの方策を放棄したことなり、再来年度以降UH-Xの調達単価は20億円を超える可能性もある。過去の調達では初年度だけを安くして、後年度の調達単価が高騰することが少なくない。これでは防衛省自らが装備価格の高騰の制御を放棄したと取られてもしかたあるまい。


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